動産を債務者の手元に置いたまま担保にする制度。動産を担保にして金融を得る方法として民法に用意されている方法は質権だけである。その結果、動産を担保に金融を得るにはその動産を債権者に引き渡さなければならない。これでは、生産用具などの動産を担保にして資金を調達することは、実際上、不可能であることになる。他方、占有を債務者に置いたまま担保とするには、なんらかの公示の方法が必要であるが、かつてはその方法がなかった。そこで、とくに特殊の動産について、法律は特別の登記・登録制度を設けると同時に、これを債務者の手元に置いたまま担保にすることを認めた。その結果、債務者は、担保に供しようとする動産が生産用具であっても、それを担保として金融を得ることができるようになった。これが動産抵当の制度である。現在は、農業用機械・牛馬・漁船・ヒツジ・ニワトリなどの農業用動産(農業動産信用法)、自動車(自動車抵当法)、航空機(航空機抵当法)、トラクター・起重機などの建設機械(建設機械抵当法)について認められている。
[高橋康之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これは,株式会社の社債を担保するために,企業の物的施設のみならず〈のれん〉等も含む有形無形の総財産の上に設定される物的担保で,企業担保法(1958公布)が定める。第3に,特殊の動産につき,特別の公示方法を設けて,その上に抵当権を設定する動産抵当が認められている。動産の担保化は質権によるというのが民法のたてまえであるが,企業設備としての動産を,占有を移転しないで担保化する必要が,とくに不動産を所有しない中小企業者において高まり,次の各種の動産について動産抵当が認められるに至っている。…
※「動産抵当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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