動脈硬化症・大動脈瘤(読み)どうみゃくこうかしょうだいどうみゃくりゅう

食の医学館 「動脈硬化症・大動脈瘤」の解説

どうみゃくこうかしょうだいどうみゃくりゅう【動脈硬化症・大動脈瘤】

《どんな病気か?》


〈加齢によって起こるが生活習慣なども誘因に〉
 動脈硬化(どうみゃくこうか)とは、動脈の壁が弾力を失い、内腔(ないくう)コレステロールカルシウムがたまって細くなり、血液が流れにくくなった状態です。細くなった部分に血液のかたまり(血栓(けっせん))がつまって血流が完全にストップしてしまう(梗塞(こうそく))と、その動脈から栄養や酸素を供給されている臓器や組織に壊死(えし)が起こり、部位によって心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞(のうこうそく)などになります。
 また、動脈硬化がすすみ、動脈壁の弱い部分が血圧にたえかねて、こぶのようにふくらんだ状態を動脈瘤(どうみゃくりゅう)といい、胸部、胸腹部、腹部の大動脈で起こるものが大動脈瘤です。
 ふくらみが大きくなるにつれてこぶの壁はどんどん薄くなり、ついには破裂して大出血を起こし死にいたることもあります。大動脈瘤ができてしまったら、破裂前に手術を行う以外に治療法はありません。
 動脈硬化は、年齢とともにだれにでもある程度は起こりますが、高血圧、脂質異常症、糖尿病(とうにょうびょう)、肥満、体質、性格、喫煙、ストレス、運動不足なども誘因となります。

《関連する食品》


〈食事量と塩分、動物性脂肪、コレステロールをひかえる〉
○栄養成分としての働きから
 高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの危険因子を予防するためには、摂取エネルギーを制限する必要があります。食べすぎると、よぶんのエネルギーが体脂肪に転換され、血圧、コレステロール、中性脂肪などが上昇しやすくなるからです。また、高血圧にならないよう、塩分は1日に食塩6~8g以内にします。
 肉の脂身(あぶらみ)バターラードなど、飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)の多い動物性脂肪も避けましょう。飽和脂肪酸は体の中でかたまりやすいために、血液の粘度(ねんど)が上がり、流れにくくなって、血中コレステロールや中性脂肪をふやすからです。
 たまごウナギレバー、イカなど、コレステロールを含む食品を食べたからといって、血中コレステロールがふえるとはかぎりませんが、コレステロール値の高い人は、ひかえめにします。甘いものやアルコールのとりすぎは中性脂肪をふやします。
〈青背の魚や海藻類からIPA、DHAを摂取〉
 動脈硬化症の人は肉よりも魚を多めにし、野菜や海藻、キノコなどを十分にとる食事を心がけましょう。
 魚にも飽和脂肪酸は含まれていますが、それよりもIPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といった不飽和脂肪酸のほうが多く含まれています。IPAやDHAには、血栓を防ぎ、血中コレステロールを減らす作用があり、動脈硬化の改善に役立ちます。
 ハマチキンキイワシニシン、マグロ、サバなどの魚は、IPA、DHAをともに多く含んでいるので有効です。
 また、シソ、ワカメコンブなどに含まれるα(アルファ)リノレン酸は、体内でIPAにかわり、さらにIPAを経てDHAが合成されるので、同様の働きが期待できます。
 マカダミアナッツアーモンドなどのナッツ類やオリーブ油、キャノーラ(菜種)油、赤身の肉類などに含まれるオレイン酸にも、血中コレステロールを減らす作用があります。
〈コレステロールや過酸化脂質がたまるのを防ぐ成分も有効〉
 肝臓で分泌(ぶんぴつ)される胆汁酸(たんじゅうさん)にはコレステロールを排泄(はいせつ)させる働きがありますが、この分泌をうながす作用のある成分がタウリンです。タウリンはサザエ、アサリ、ホタテガイといった貝やタコ、魚の血合いなどに多く含まれています。
 また、食物繊維には、脂肪を吸着して吸収をさまたげる作用があり、コレステロールの上昇を抑えます。ワカメ、こんにゃく、ゴボウ、ダイズやダイズ製品には食物繊維が豊富に含まれています。
 動脈硬化は、過酸化脂質(かさんかししつ)が血管壁でふえると起こりやすくなりますが、その過酸化脂質の生成を抑えるのがビタミンEです。血行をよくする作用もあわせもっているので、アーモンド、ダイズ、青背の魚や青菜など、ビタミンEを多く含む食品をとるのも有効です。
 ダイズには、コレステロールの血管壁への沈着を防ぐレシチンやコリンが、またダイズと納豆や味噌、油揚げなどのダイズ加工食品には過酸化脂質の生成を抑えるダイズサポニンが含まれています。
 ゴマやゴマ油に含まれるセサミノールという成分にも、コレステロールを減らす働きがあります。
 赤ワインブームで注目されたポリフェノールには、悪玉コレステロールの酸化を防ぐ働きがあり、動脈硬化に有効です。緑茶や紅茶、烏龍茶などのお茶のほか、リンゴ、モモなどのくだものやゴボウ、レンコンといった野菜にも含まれています。
○漢方的な働きから
 血液中のコレステロールを減らし、吸収を抑える働きがあるとされる干しシイタケの煎(せん)じ汁を1日1回飲んだり、新陳代謝(しんちんたいしゃ)を高め、血液循環を促進するとされるゴボウを煮て、おかゆのようにして食べると、動脈硬化の予防に効果的といわれています。

出典 小学館食の医学館について 情報