アーモンド(読み)あーもんど(英語表記)almond

翻訳|almond

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーモンド」の意味・わかりやすい解説

アーモンド
あーもんど
almond
[学] Prunus dulcis (Mill.) D.A.Webb
Prunus amygdalus Batsch

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。別名アメンドウヘントウ(扁桃)、ハタンキョウ巴旦杏)。染色体数は2n=16である。葉は長楕円(ちょうだえん)形で長さ約10センチメートル、鋸歯(きょし)があり、表面は平滑で光沢がある。花は径2~3センチメートル、花弁は基本的には5枚、雌しべ1本、雄しべ30本余り、葉の出る前に開花する。果実はモモに似るが扁平(へんぺい)で高さ数センチメートル。果肉は水分が少なく、堅いが、熟すと裂けて核を露出する。核は扁平で、堅くて割れにくい硬核種から、紙のように薄く、割れやすい軟核種まであり、核内には普通1個の仁(じん)がある。この仁がアーモンドナッツとして利用され、軟核種が果実用として栽培される。

 西アジア原産で、南西・中央アジア、トルコ、シリアカフカス、イラン、天山山脈、ヒンドゥー・クシ山脈、アフガニスタンまで広く野生種が分布し、変異は大きい。モモに似た植物で、栽培の歴史は古く、4000年以前から栽培されていた。栽培はモモよりやや暖かく、果実の発育期、とくに収穫期に乾燥する地方がよく、アメリカのカリフォルニア、スペイン、イタリア、フランス、フランス領モロッコ、ポルトガルなどで多く栽培されている。多数の品種があり、ノンパレル、ビュートモントレーなどが知られる。いずれも自家不結実性なので、交配親和性から6群に分けられ、授粉用に他品種との混植が行われる。開花期の霜抵抗性、冬期の低温抵抗性あるいは高温抵抗性品種が望まれる。日本には明治初年に導入されたが、気候にあわず、一般には栽培化されていない。

[飯塚宗夫 2019年12月13日]

利用

仁に苦味をもつ苦仁種苦扁桃(くへんとう))と、甘味をもつ甘仁種とがある。前者は薬用としてその抽出油の苦扁桃油は咳(せき)どめに使用され、後者の甘仁油は保健によい。アーモンドナッツは甘仁種の仁で、100グラム中に脂肪54グラム、タンパク質19グラム、そのほか多量のミネラル類、少量のビタミン類を含み、598カロリーをもつ。仁を包む褐色の薄皮は、熱湯をかけるか、蒸気処理で簡単に除去できる。生食のほか、炒(い)ったり、塩や調味料を加えて油炒(いた)めにする。チョコレート菓子や、スライスして練り菓子アイスクリームに、ペースト状にして菓子類の材料にしたり、広く利用される。

[飯塚宗夫 2019年12月13日]

香りの利用

苦仁種は甘仁種より芳香が強いので、アーモンドエッセンス製造用に使われている。苦仁種には青酸が含まれているので、化学的処理をしてから用いられている。香りは杏仁に似ているので、中国料理の杏仁豆腐(シンレントウフ)の香りづけや、リキュールにも使われる。

[齋藤 浩 2019年12月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アーモンド」の意味・わかりやすい解説

アーモンド
Almond, Gabriel Abraham

[生]1911.1.12. イリノイ,ロックアイランド
[没]2002.12.25. カリフォルニア,パシフィックグローブ
アメリカの政治学者。 1932年シカゴ大学卒業,38年博士号取得。プリンストン大学,エール大学などの助教授,教授を経て 63年以降スタンフォード大学教授。この間,社会科学研究評議会比較政治学委員長 (1954~63) ,東京大学客員教授 (62) 。さらにスタンフォード大学政治学部長 (64~68) ,アメリカ政治学会会長 (65~66) ,ケンブリッジ大学在外フェロー (特別研究員,多くは教職を兼ねる。 72~73) などを歴任。専門は政治行動・比較政治学で,特に新興国の政治に関する構造・機能分析で有名。主著『アメリカ国民と外交政策』 The American People and Foreign Policy (50) ,『発展途上地域の政治』 The Politics of the Developing Areas (60,編著) ,『市民文化』 The Civic Culture (63,S.バーバと共著) ,『比較政治学-発展アプローチ』 Comparative Politics: A Developmental Approach (66,G.パウエルと共著) 。

アーモンド(扁桃)
アーモンド
Prunus amygdalus; almond

バラ科の落葉高木。ハタンキョウ (巴旦杏) ,アメンドウともいわれ西アジア原産。地中海沿岸で改良され,現在はアメリカのカリフォルニアで盛んに栽培されている。日本には明治初年に輸入されたが,気候の相違から栽培は成功しなかった。モモに近い種類であるが果肉は薄くて食用にならず,核に包まれた大型の種子が利用される。スイートアーモンド (甘扁桃) とビターアーモンド (苦扁桃) の別がある。前者は洋菓子の原料やいわゆるナッツとしてそのまま食し,アーモンドといえばこれをさす。後者はアミグダリンを含むため苦く,種子から杏仁水をとって薬用,化粧用,香料に使用する。

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