(読み)マナ

デジタル大辞泉 「勿」の意味・読み・例文・類語

まな【×勿/×莫】

[副]漢文訓読で「…することまな」の形で、…するな、…してはならぬ、の意を表す。和文では単独で「いけない」と制止する意を表す。
ねがはくはみまかりて後に人をいたはらしむること―」〈岩崎本皇極紀〉
「それを―ともとり隠さで」〈・一五二〉

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精選版 日本国語大辞典 「勿」の意味・読み・例文・類語

まな【勿・莫】

  1. 〘 副詞 〙 「…すること」と呼応して禁止を表わす漢文訓読語。…するな。…することなかれ。和文脈では単独で「いけない」「よせ」などと制止する語として用いられる。
    1. [初出の実例]「雷の神、人夫(おほむたから)を犯すこと無(マナ)」(出典日本書紀(720)推古二六年是歳(岩崎本訓))
    2. 「それを、まなともとり隠さで、さなせそ、そこなふななどばかり、うち笑みていふこそ、親もにくけれ」(出典:枕草子(10C終)一五二)

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普及版 字通 「勿」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 4画

[字音] ブツ・フツ・モチ
[字訓] はた・なかれ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
弓体に呪飾をつけた形。その字の初形は、弓弦の部分を断続したもので、弾弦の象を示すものかと思われる。すなわち弾(だんがい)を行う意で、これによって邪悪を祓うものであるから、禁止の意となる。〔説文〕九下に字を旗(きし)の象とし、「州里つるの旗なり。其のの三游(いう)(吹き流しるに象る。雜帛(ざつぱく)(へり飾りのある旗ぎれ)幅ば異なり。民を趣(うなが)す以なり。故に遽(には)かなることを勿勿(ふつふつ)とす」といい、重文として(えん)に従う字を録する。〔説文〕は勿を物旌(氏族標識の旗)と解するが、卜文の字形は弓体を主とする形にみえ、金文の字形は、耒(すき)で土を撥(は)ねる形に作り、字形に異同がある。おそらく弓弦の勿、撥土(はつど)の勿と、それに〔説文〕のいう物旌の勿とは、その声近く、字形も類しているために、時期によってその用字が推移したものであろう。ただ禁止の意を主として字形を求めるならば、弾弦の象を示す卜文の形が原義に近く、撥土の象を用いるものは仮借、物旌は呪飾としての吹き流しで、これにも呪禁の意がある。

[訓義]
1. はた、吹き流しをつけたはた、はたじるし。
2. ゆはずの音、弾弦。
3. 土はね、つよくはねる、はね出す。
4. なかれ、禁止の語。
5. 勿勿は、いそぐ、あわただしい、つとめるさま。

[古辞書の訓]
名義抄〕勿 ナシ・マナ・ナカレ

[部首]
〔説文〕に昜(よう)をこの部に属し、日と一と勿とに従い、「開くなり」と訓し、また「飛揚するなり。長きなり。彊き衆き皃なり」の意があるとする。昜は陽の従うところで陽の初文。日は玉の形。玉を台上におき、その玉光が下方に放射する形、勿はその放射の状を示すもので、いわゆる物旌の勿とは関係がない。〔玉〕には、勿部になお(り)を加える。は犂(り)、黎の従うところで、は犂(すき)で土を撥ねる形。金文の勿はその形かと思われるが、吹き流しの勿とは意象の異なる字であると考えられる。

[声系]
〔説文〕に勿声として物・吻・・忽など七字を収める。忽・笏(こつ)は勿と声異なり、別系の字である。

[語系]
勿・未miutと同声、無・毋miua、(亡)・罔miuang、靡miai、蔑miat、(微)miui、mak、末muatは、みな声近く否定詞に用いる。このうち本来の否定詞とすべきものはないが、勿は弾弦の象で祓除呪禁、蔑・は敵の媚女巫祝を伐ってその呪力を減殺(げんさい)する意、薄暮視界の消える意で、みな否定的な語意がある。

[熟語]
勿歯勿守勿述・勿然・勿寧・勿勿勿罔勿薬・勿有・勿憂・勿用・勿慮・勿論

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