医学部入試における女性差別問題(読み)いがくぶにゅうしにおけるじょせいさべつもんだい

知恵蔵の解説

医学部入試における女性差別問題

医学部の入学試験に女性差別があり、女子合格者を減らすための操作が行われていることを巡る様々な問題。東京医科大学の入試の合否判定について、女性などを不利に扱う不正な操作が大学当局の主導で行われていたことが、2018年の内部調査で明らかになった。これをきっかけに文部科学省の訪問調査が行われ、複数の医学部で性別などによって合格の取り扱いに差を設けていることが判明した。
女子医大のような例外を除けば、すべての医大の入試で募集要項などに性別や浪人年数による制限や格差が示されている例はない。しかし、女子であることや浪人年数により不利に扱う得点調整などが、少なくない医学部で行われているとの風評はかねてから存在した。予備校などでは大学名も公然とささやかれ、面接での結婚や出産についての想定問答対策などが行われていた。東京医科大で内部調査が行われたのは、私立大支援事業を巡る文科省汚職事件で、大学に便宜を図る見返りに局長の息子を不正に合格させたことによる。8月の調査報告は、特定の受験生についての加点が行われていたことや、女子と3浪、4浪男子の受験生には大きな点差をつけて入学を抑制することが、少なくとも06年から行われていたと明らかにし、女性差別以外の何物でもなく受験生に対する背信行為だと断罪した。この事態を受けて、文科省は医学部医学科を置く全国81の国公私立大学(防衛医科大を除く)を対象に調査を行った。各大学は、性別による加点などの「不適切な操作はない」と回答したが、女子の合格率を男子の合格率が大きく上回る医学部が見られた。13年から18年の6年間の通算合格率の男女比率(女子合格率÷男子合格率)は、全大学(東京女子医大を除く)で1.18で、東京大1.03、慈恵医科大1.06、東京医科歯科大1.11などがこれを下回る。その一方、格差が最大の順天堂大1.67、後に浪人生を不利に扱ったことを公表した昭和大1.54や、年度によっては比率2.00以上もの差が見られた大阪市立大1.36、日本大1.49など、6年間連続で男子優位だった大学もある。この調査の後、女子合格率が低いなどの約30大学を文科省が訪問調査した結果、複数の大学の入試で男女や浪人年数によって合格に至る取り扱いに差違を設けているように見受けられる事例や、特定の受験生を優先的に合格させているように見受けられる事例などがあったと発表した。
このようななか、医学部を置く国公私立大学、病院が参加する「全国医学部長病院長会議」は、性別や年齢によって受験生を不利に扱うことを禁じる「大学医学部入学試験制度に関する規範」を公表した。規範では、入学者受け入れ方針(アドミッションポリシー)に、国民から見て公平であること及び国民にとって良い人材を確保することを掲げた。これに反し、女子であることで一律に差を設けるなどは不適切で、そのような選抜方法を募集要項に示したとしても認められないとした。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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