十六むさし(読み)じゅうろくむさし

改訂新版 世界大百科事典 「十六むさし」の意味・わかりやすい解説

十六むさし (じゅうろくむさし)

室内遊戯の一つ。〈十六六指〉〈十六武蔵〉などとも書く。往昔には単に〈むさし〉とも呼び,〈六指〉〈八道〉の文字を当てた。図のような盤の中央に親駒を置き,子駒16個を正方形外周に配置し,親,子の順に任意の方向に駒を1目ずつ動かす。親駒が子駒と子駒の間に割り込めば,その2駒をとることができる。子は親に入り込まれないように駒を進め,親駒を動けないようにすれば勝ち。逆に駒をとられて,残り5~6個になると親を追い込むのは不可能であるから,親の勝ちとなる。ただし親駒が三角形の〈牛部屋〉〈雪隠(せつちん)/(せついん)〉にあるときは,4個でも子が勝つ可能性はある。十六むさしがいつごろから遊ばれていたかつまびらかでないが,〈八道行成(やさすかり)〉がその前身と考えられる。これは《和名類聚抄》に〈八道行成読夜佐須加利〉とあり,中国から渡来したもので,少なくとも平安中期には行われていた遊びであることはまちがいない。しかし,同書の〈八道行成〉については《安斎随筆》や《和訓栞(わくんのしおり)》などに諸説があり,十六むさしとまったく同じ遊びであったかは未詳である。柳亭種彦は《足薪翁記》で,八道行成はいつか絶えて十六むさしは別におこったもののようだ,ともいっている。江戸時代にこの遊びは盛んとなり,《物類称呼》に〈京江戸共に,十六むさしと云,中国にてむさしと云,上野下野辺にて十六さすがりと云……〉とあるように,全国的に広まっていたことがわかる。なお,十六むさしによく似た遊びとして,ヨーロッパ中心に古くから遊ばれている〈キツネとガチョウfox and geese〉がある。
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百科事典マイペディア 「十六むさし」の意味・わかりやすい解説

十六むさし【じゅうろくむさし】

十六六指,十六武蔵とも書く。江戸時代から明治中葉まで行われた室内遊戯。盤は方形と三角形をつないだ形で,内側を縦,横,斜めの線で区分,計33の点がある。方形の中央に親石を置き,周囲に16個の子石を配する。親は線のところを1こまずつ動き,子の間に割り込むと,両側の子を取る。子は間に割り込まれないようにして親の進路を妨げ,三角形の牛部屋あるいは雪隠(せっちん)に追い込んで動けないようにすると勝ちとなる。反対に親が子を取ってしまうと親の勝ち。原形平安時代に中国から伝来した八道行成(やさすかり)と考えられ,英国やドイツにも同種の遊戯がある。

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