改訂新版 世界大百科事典 「十六大国」の意味・わかりやすい解説
十六大国 (じゅうろくたいこく)
仏教経典に記されたブッダ時代のインド諸国の総称。大国とはマハージャナパダmahājanapadaの訳で,マハーは〈大きい〉,ジャナパダは〈人間の居住地〉を意味する。国名は経典によって若干の相違があるが,パーリ語原始仏教経典によれば,アンガAṅga,マガダ,カーシーKāsī(カーシKāsi),コーサラ(国),バッジVajji,マッラ,チェーティCeti,バンサVaṃsa,クル,パンチャーラ,マッチャMaccha,スーラセーナSūrasena,アッサカAssaka,アバンティAvanti,ガンダーラGandhāra,カンボージャKambojaである。ガンガー(ガンジス)川流域諸国が大部分を占めたが,ガンダーラ,カンボージャなどの西北辺境地域,デカン西部のアッサカなどの国々も含まれている。これらは前5世紀のブッダ在世時とその直後に存在した国々で,この範囲が当時ガンガー中流域を中心とした政治・経済圏であり,また仏教が初期に広まった地域であろう。このなかで,マガダ,コーサラ,バッジ,アバンティは四つの大国として数えられ,クル,パンチャーラやバッジに代表される部族制国家に対して,いずれも強大な権力を握った王が支配した国であった。とくにマガダ国はブッダのときから他の多くの国々を滅ぼしてインド統一の道を歩んだ。
執筆者:山崎 利男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報