十地(読み)ジュウジ

デジタル大辞泉 「十地」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐じ〔ジフヂ〕【十地】

菩薩ぼさつが修行しなければならない52の段階うち、第41位から第50位までの階位華厳経では、歓喜地・離垢地・発光地・焔慧地・難勝地・現前地・遠行地・不動地・善慧地・法雲地。ほかに、声聞しょうもん縁覚えんがくの十地などがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「十地」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐じジフヂ【十地】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏語。仏のさとりをうるまでの修行段階を一〇に整理したもの。乾慧地・性地・八人地・見地・薄地・離欲地・已作地・辟支仏地・菩薩地・仏地の一〇種や歓喜地・離垢地・発光地・燄慧地・難勝地・現前地・遠行地・不動地・善慧地・法雲地の一〇種などの外に、声聞の十地・縁覚の十地があり、また仏の十地として仏の徳を一〇の面から数えたものなど、数種がある。〔即身成仏義(823‐824頃)〕
      1. [初出の実例]「十地(ジウヂ)階級によりて、報身能化の形異なれども」(出典源平盛衰記(14C前)二四)
    2. 菩薩のこと。
      1. [初出の実例]「亦大僧等、徳は十地に侔(ひと)しく、道は二乗に超えたり」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  2. [ 2 ]じゅうじきょう(十地経)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「十地」の意味・わかりやすい解説

十地 (じゅうじ)

仏教を修行する過程での10の境地・段階を指す。サンスクリットdaśa-bhūmiの訳語であるが,他に〈十住(じゆうじゆう)〉とも訳されている。しかし,十住は十地よりも低い段階を指している場合もある。仏教経典中には何種類かの十地が説かれているが,もっとも代表的なものが〈菩薩(悟りを求め修行している人)の十地〉で,悟りの境地すなわち仏となる直前に経過しなければならない10段階の総称である。またその最後の第十法雲地(ほううんじ)を略して十地ということもある。仏教に入信してから順次に十信,十住,十行(じゆぎよう),十回向(じゆうえこう),十地,等覚(とうがく)を経て第五十二位妙覚(みようかく)(=仏の位)に達するのである。菩薩の十地はとくに《華厳経(けごんきよう)》中に詳しく説かれている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十地」の意味・わかりやすい解説

十地
じゅうじ
daśa-bhūmi

菩薩が修行して経過すべき 52位の段階のうち第 41位から第 50位までの 10位をいう。菩薩思想の発展とともに大乗仏教で強調された重要な修行論。名称,数などが初めから一致していたわけではないが,竺法護によって漢訳された『漸備一切智徳経』 (297) では,すでに十地思想がはっきり確立していたことがわかる。十地として確立した名称は歓喜地,離垢地,発光地,焔慧地,難勝地,現前地,遠行地,不動地,善慧地,法雲地である。その内容については大乗諸経論中で論じられている。特に,唯識関係の論書では,十地において認識上の 10種の障害が取除かれ,それぞれの段階で 10種の波羅蜜 (→十波羅蜜 ) が実践されると説く。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android