江戸時代,捕吏の所持した小型武器。長さ30cmから60cmほどの金属棒で,握り部分の前に鉤(かぎ)がついている。室町時代以降中国より伝来したものといわれ,犯罪者逮捕の用具として定着した。抵抗する相手を痛打し,刀が振るわれれば受け止めて鉤でねじ押さえる。格闘中落とさないよう柄尻の鐶(かん)に紐を結わえるが,その色は所属により違い,町奉行与力・同心は赤,関東取締出役は紫か浅黄の房紐を用いた。警察権力の象徴として,鉄製実用本位な十手のほか,シンチュウ製で意匠をこらしたものもあった。
執筆者:加藤 英明
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江戸時代の警吏の携帯した犯人逮捕のための武具。長さ1尺(約33センチメートル)あまりの鉄棒で、柄(え)には組紐(くみひも)の緒を巻き、鐔元(つばもと)には相手の刀剣を受けて、からみ落とすための直角の鉤形(かぎがた)をつける。始源は明らかではなく古文献にはみえない。慶安(けいあん)年代(1648~52)中国人の陳元賓(ちんげんぴん)が十手術を伝えたというから、江戸初期、中国伝来の武器であろう。町奉行所(ぶぎょうしょ)や火付改(あらため)の同心と与力は銀ながし(銀めっき)の十手で、その柄に巻いた緒は朱房(しゅぶさ)で、関東取締出役(とりしまりしゅつやく)は紫か浅葱(あさぎ)色の緒であった。粗製のものを同心の小者も携帯した。また、まれに目明しなども持つ場合があった。「じってい」「手木(てぎ)」ともいった。
[齋藤愼一]
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