日本大百科全書(ニッポニカ) 「南部石」の意味・わかりやすい解説
南部石
なんぶせき
nambulite
イノ珪酸(けいさん)塩鉱物の一種。柱状ないし板状の結晶形をすることもあるが、普通は塊状ないし粒状の鉱物。ばら輝石やパイロクスマンガン石に似るが、橙(だいだい)色みが強く、条痕(じょうこん)色も黄橙色みがある。変成層状マンガン鉱床中に、ブラウン鉱、ばら輝石、石英などと産する。
1972年(昭和47)岩手県舟子沢(ふなこざわ)鉱山(閉山)より最初に発見され、当時東北大学教授でマンガン鉱物・鉱床の研究者、南部松夫(1917―2009)にちなんで命名された。現在日本では、福島県御斎所(ございしょ)鉱山(閉山)ほか数か所の産地があり、インドやアフリカにも産出が知られている。1985年(昭和60)、ナトリウムがリチウムより多い別種、ソーダ南部石が岩手県田野畑(たのはた)鉱山(閉山)より発見された。
[松原 聰]