印税(読み)いんぜい

日本大百科全書(ニッポニカ)「印税」の解説

印税
いんぜい

著作権の存在する著作物の発行にあたって、出版者から著作権者に支払われる一定率の著作権使用料。原稿料、画料なども著作権使用料の一種だが、これは定額で、1回限りの使用に対して支払われるものだから、印税とは区別する。印税は普通、定価×発行部数×一定率(5~10%)であるが、返品率の急伸のため、一定保障部数を設定したうえ、実売部数を算定の基準にする例もある。印税の支払い期日、方法、印税率は、対象出版物の性質、内容、採算性など諸条件を勘案して、著作(権)者と出版者が協議して決めるものであり、一様ではない。実績のない著作者の場合は無印税、あるいは重版後から5~10%の例がある。一方、著名な著作者には12~20%の高率が適用される。欧米では、最低保障制に加えて、初版の場合、前払い(アドバンス)を伴うことが多い。支払い額は、通常は初刷り部数を基準にするが、競争によって競り上がって高額になる例も少なくない。

 印税制の始まりは、欧米では19世紀以降。日本の場合は、長らく、森鴎外(おうがい)が、1892年(明治25)刊の『水沫(みなわ)集』出版にあたって25%を主張したのが始まりとされていた。しかし、1886年12月、東京朝日新聞社の初代主筆を務めた小宮山桂介(こみやまけいすけ)(天香(てんこう))がエルクマン・シャトリアンの『マダム・テレーズ』を『慨世史談・断蓬奇縁(だんほうきえん)』と改題して出版した際、鳳文館(ほうぶんかん)の前田円と出版契約を交わして決めたのが最初。翻訳出版の場合は、原作者と翻訳者への印税が合算されるため高率になることが多い。

[小林一博]

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百科事典マイペディア「印税」の解説

印税【いんぜい】

著作物を出版発売する条件として,発行者(出版者)が著作者あるいは著作権者に支払う著作権使用料をいう。出版契約によって定価の一定率(印税率)を決定し,発行部数または売上部数に基づいて計算される。ヨーロッパでは19世紀初頭以来実施され,日本では1886年に小宮山天香がエルクマン・シャトリアンの《マダム・テレーズ》を翻訳した《慨世史談 断蓬奇縁》を出版した際に鳳文館と交わした契約が最初といわれる。→検印

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精選版 日本国語大辞典「印税」の解説

いん‐ぜい【印税】

〘名〙
① 「いんしぜい(印紙税)」の略。〔布告律令字引(1876)〕
② 著者または著作権者が作品の使用料として出版者などから受けとる金銭。定価、発行高に応じて、一定歩合によって定められる。作曲家や歌手が吹き込んだCDなどの発売数による収入も、これに含まれる。〔ことばの泉(1898)〕
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生富士を観る「その日受けとった許りの印税」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「印税」の解説

印税
いんぜい
royalty

出版業者が著作権者に支払う著作権の使用料。通常,出版物の定価に対して5~15%程度が部数に応じて支払われる。かつては印刷部数に対しての支払いであったが,最近は売上部数に対する支払いへと変りつつある。

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世界大百科事典 第2版「印税」の解説

いんぜい【印税】

著作物の出版において,出版契約に基づき出版者から著作権者に対して支払われる経済的報酬の一種で,一定の単価基礎に出版物の発行部数あるいは実売部数に応じて支払われる著作権の使用料。印税の単価と出版物の定価とのを印税率という。印税方式による著作権使用料の支払いは,出版者にとってはみずからの出版計画に応じて経済的責任を負い,著作権者にとっては出版による利益に応じて報酬を確保できる合理的な方法であり,出版が比較的長期間継続するような書籍に適合している。

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世界大百科事典内の印税の言及

【原稿料】より

…著作は通常,原稿用紙に執筆されるので,原稿料と呼ばれ,多くの場合,400字詰原稿用紙1枚当りの報酬を単価とする。原稿料は新聞・雑誌などの著作物1回の使用料で,書籍の場合は大多数が印税方式をとる。欧米では,印税は日本とほぼ同じであるが,原稿料の単位は語数による。…

※「印税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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