広義には推進用エネルギー源として核エネルギーを用いるロケットを指すが,狭義には水素を原子炉の熱で高温状態とした後ノズルより噴射する形式のロケットをいう。後者の原子力ロケットの開発は,アメリカで1955年より始められ,60年代において数多くのエンジンが試作試験されたが実用に至らぬまま72年以降開発は中断されている。化学ロケットの倍程度の比推力が得られる反面,システム質量に比べて推力は小さいので,もっぱら軌道間飛行用である。原子炉の炉心はできるだけ高温が望ましくかつ水素との熱交換を容易にする必要があるため,例えば炭化ウランと高融点の金属炭化物との固溶体に練炭の穴のような流路を設けたものが用いられる。出力の制御は,炉の中への中性子吸収体の出し入れや周辺に配置した反射体の回転で炉中の中性子束を加減することで行われる。推進剤である水素は炉中に入る前にノズル壁,反射体を再生冷却するのにも利用される。
執筆者:秋葉 鐐二郎
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原子力エネルギーを利用し推力を得るロケット。原子核反応炉を搭載し、その発生熱を利用して液体水素のような小分子量の推進剤を加熱気化し、生成ガスをノズルから排出することにより、その反作用として推力を発生する。このように熱源以外は化学ロケットと類似点が多く、比推力もその2~3倍程度で、イオン・ロケットなどに比べるとかなり低い。また、放射能に対する安全性の問題もあってまだ実用例はないが、将来の深宇宙飛行など、超長距離、長時間飛行への利用は期待される。
[黒田泰弘]
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