原子力ロケット(読み)げんしりょくロケット

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力ロケット」の意味・わかりやすい解説

原子力ロケット
げんしりょくロケット
nuclear rocket; nuclear propulsion systems

原子核エネルギーを利用するロケット。いろいろな種類があるが,その一つは原子炉加熱型と熱伝導型と呼ばれるもので,ロケットのエンジン部に小型の原子炉を積み,液体水素を原子炉の炉心を通して,高温水素ガスとしてノズルから噴出する。ガスの排出速度は,ガスが軽く,高温であればあるほど大きい。水素は最も目方が軽いので,排出用としては最適なわけである。この方式の原子力エンジンは,アメリカで 1959年にローバー計画として始められた。このほかアークロケットや,イオンロケットプラズマロケットのような電気推進ロケットの発電源として,原子力を使う方式がある。しかし一般に,化学ロケットに比べて,原子力ロケットは推力が小さいので,大型宇宙船などを地上から直接打上げるには適さない。そこで多段式ロケットの最終段に用い,下段部の化学ロケットでまず人工衛星軌道に乗せたのち,月や火星金星などの惑星への飛行に利用することが考えられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力ロケット」の意味・わかりやすい解説

原子力ロケット
げんしりょくろけっと

原子力エネルギーを利用し推力を得るロケット。原子核反応炉を搭載し、その発生熱を利用して液体水素のような小分子量の推進剤を加熱気化し、生成ガスをノズルから排出することにより、その反作用として推力を発生する。このように熱源以外は化学ロケットと類似点が多く、比推力もその2~3倍程度で、イオン・ロケットなどに比べるとかなり低い。また、放射能に対する安全性の問題もあってまだ実用例はないが、将来の深宇宙飛行など、超長距離、長時間飛行への利用は期待される。

[黒田泰弘]

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