炭素質固形燃料の一種。無煙炭、石炭、木炭、コークスなどの粉末を固めて適当な形と大きさに成形した固体燃料。原料の粉末を適当な割合に混ぜて粉砕し、ピッチ、フノリ、パルプ廃液などの結合剤を加えてよく練り合わせ、機械で一定の形に成形する。原料中の硫黄(いおう)分を固定するために石灰を加えることもある。工業用練炭は、これをよく乾燥しただけでよいが、家庭用は、一度500~600℃で乾留して、揮発分や悪臭ガスを除いている。工業用のものは長方形や卵形で大きく、かつてはおもに蒸気機関車や船に使われていた。家庭用としては、豆炭、棒炭、穴あき練炭(太い円筒状で縦に穴があいている)、たどんがある。練炭の上層部に火のつきやすい物質の層をつけたり、着火を容易にする触媒(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)を混ぜた着火練炭、マッチ練炭もある。小さなものは採暖用、大きなものは業務用、産業用に使われる。
特徴としては、適当な形と大きさがそろっていること、灰分や揮発分を加減することができること、燃え方が穏やかで火もちのよいこと、運搬や取扱いが便利なことなどである。品質を左右する練炭の組成、発熱量は原料の調合により異なる。
1960年(昭和35)ころより日本では、製鉄用の原料となる粘結炭の不足を解消するための技術開発が進められ、劣質の粘結炭(微粘結炭、非粘結炭)に粘結剤を加えないで成形した成形炭(ブリケット)が製造されるようになった。また、成形炭を粉炭とともに室炉(コークス炉)に装入して製鉄用コークスがつくられている。
練炭が燃焼する際、一酸化炭素が発生しやすいので、屋内での使用は換気に気をつける必要がある。気密性の高い住宅での使用は好ましくない。
[真田雄三]
主として家庭で炊事用,あんか用などに使われる固体燃料。一般には円筒形で縦に数本の穴のあいたものを指し,ボール形に固めたものを豆炭という。無煙炭を主原料とし,粉コークスのほか粘結剤としてのパルプ廃液,ベントナイト,また石炭中の硫黄分の固定剤としての石灰,酸化鉄,ソーダ灰などを配合し,これらを粉砕,配合,調湿,練り,成形,乾燥,包装の工程をへて製品とする。着火しやすいように,松炭などの燃えやすい炭素材に助燃剤として塩素酸カリウムを加えた着火炭を練炭の底につけたものが開発されている。このほか,工業用ピッチ練炭がある。これは有煙炭にコールタールピッチなどを加え,粉砕,混合し,水蒸気を吹き込みながら加熱,混和したのち,高圧下で成形し,冷却してつくられる。
執筆者:冨永 博夫 練炭の起源は,明治初年に長崎で発明され,1876年(明治9)ごろに東京の蒸気船問屋で〈角型塊炭〉の名称で販売されはじめた1~2寸角の固型燃料にさかのぼる。その後,94年になると,海軍省の竹田少佐が,無煙炭の粉末を用いてつくった固型の燃料を,航行中に黒煙を吐く,それゆえ敵艦に発見されやすい従来の石炭のかわりに〈角炭〉として軍艦に使用して,珍重されるようになった。他方,民生用としては,群馬県を中心に養蚕室の保温用として普及したが,当初は,臭気が強く,着火が困難であるという欠点があったため,小野沢辰五郎という人が改良に着手。1935年に,低温で容易に火のつく着火炭の実用新案登録に成功したのち,さらに改良に努め,ついにマッチ1本で着火する練炭の開発に成功して,広く日本中で重用されるようになった。しかし,昭和30年代も半ばをすぎるころからは,燃料全般の石炭離れが進むにしたがって,練炭を見かけることはほとんどなくなってしまった。最近では年間10万tの需要があるにすぎない。
執筆者:高田 公理
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