六訂版 家庭医学大全科 「反回神経麻痺」の解説
反回神経麻痺
はんかいしんけいまひ
Recurrent nerve palsy
(のどの病気)
どんな病気か
発声時には左右の声帯が中央方向に近寄って気道が狭まるので、呼気により声帯が振動して声が出ます。また
また、両側の反回神経が障害されて左右の声帯が中央付近で麻痺して動かなくなると、気道が狭くなるため呼吸困難や
原因は何か
声帯を動かす神経(反回神経)は脳幹から枝分かれして頭蓋内から下降してきますが、一度そのまま声帯の横を素通りし、
脳幹付近では
症状の現れ方
前記の原因疾患の治療後、たとえば腫瘍が反回神経周囲に浸潤したため神経を合併切除した、もしくは術後の局所の浮腫や循環障害などにより麻痺が発生する場合もありますが、声がれが初発症状で発見されることもあります。したがって、反回神経麻痺と診断された場合には、原因を徹底的に検索する必要があります。
また、気管内挿管による局所の循環障害によっても生じることがあります。脳幹付近の障害では、
検査と診断
ファイバースコープにより声帯の動きを観察することでわかります。その原因が特定できない場合には、頸部、胸部のX線検査やCT、食道造影、上部消化管内視鏡検査などを行います。
外傷や気管内挿管後に生じた声がれでは、声帯の軟骨(
治療の方法
通常、麻痺の発症から6カ月経過しても症状の改善がない場合は、機能改善手術を行います。誤嚥などの症状が強い場合には、その時期を早めることもあります。
手術には、麻痺した声帯にコラーゲンや脂肪を注入してふくらませる方法と、頸部を切開してシリコン板を挿入するか、声帯を動かす軟骨や筋肉を
発声時の左右の声帯のすきまが小さい場合は、音声訓練が有効なこともあります。両側反回神経麻痺による気道
病気に気づいたらどうする
すみやかに専門医の診察を受け、原因を検索します。原因が見つかったら、その治療を優先し、それがある程度終了した時点で反回神経麻痺の治療を受けることになります。
三枝 英人
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報