桃山~江戸時代の古筆鑑定家。近江国に生まれる。姓は平沢,初名を弥四郎,のち範定あるいは節世と改め,出家して了佐という。古筆の鑑定は室町末期には古筆に詳しい僧侶や公家が人々にたのまれて行っていたが,桃山期以降その鑑賞が盛んになるにつれて古筆鑑定をその職業とする者が出てきた。それが古筆家の初代,了佐である。彼は初め近衛前久,烏丸光広らに和歌などの教えをうけ,やがて古筆鑑定を専業とするに至る。また,豊臣秀次に召されて,〈琴山〉の金印を賜り古筆の姓をうけたと伝える。以後代々〈琴山〉を極印(きわめいん)とし鑑定を業とする古筆の宗家として栄え近代に及んだ。江戸時代には幕府から屋敷を拝領し,当時の人々から〈古筆見〉と呼ばれた。依頼に応じて鑑定結果を記し,〈琴山〉印を押した短冊形の紙片は極札(きわめふだ)と呼ばれ,伝来や古筆の格付けを知る上で貴重なものである。しかし筆者の真偽の鑑定は,今日の方法とは異なっている。《古筆名葉集》(1804)は古筆家から発行された〈古筆手鑑〉の案内書ともいうべきもので,たびたび刊行を重ね現存するものも多い。今日,われわれが知る古筆切の名称は古筆分家系の了体の《増補古筆名葉集》(1858)によるところが大きい。
執筆者:木下 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…実務上は筆跡間の相同性と相違性を追求するための体系の技術として存在するが,学問的には筆跡と書字運動の一部が文字として固定化したものとしてとらえた研究が進められている。筆跡の鑑定は,安土桃山時代に豊臣秀次から〈古筆〉の苗字を与えられたと伝えられる古筆見(古筆家)古筆了佐が〈古筆手鑑〉との対照によって筆跡の真偽や作者を見分けたのが始まりといわれる。それが代々引き継がれ,明治に入ってからも裁判所用の鑑定は師匠から免許皆伝を受けた古筆了悦,古筆了仲らの古筆家によって行われている。…
※「古筆了佐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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