美術作品の作者(時に流派),時代,制作場所などを決定ないし推定することをいう。一般的に鑑定の対象となるのは絵画(水彩,デッサン,版画を含む),彫刻,工芸で,建築物が鑑定の対象となることはまれである。鑑定には当然真贋の問題が含まれるが,鑑定作業のなかにはさらに,弟子あるいは助手による模写か否か,工房の作品,複数の作者がかかわった作品の分担部分の見極めなどの作業も含まれ,また別人ないし後世の手になる補筆,補修の発見などもその作業に含まれる。鑑定の最大の目的は作者の決定,いわゆるアトリビューションattributionであるが,その結果によって作品の市場(商品)価値にも大きな影響を及ぼすこともあり,この点で鑑定は,ある作品の作者や制作年代などをめぐる純粋に学問的な研究とは性格を異にしている。
真贋問題も含めた鑑定の歴史は西洋ではルネサンス時代にさかのぼるが,しかし近代的な意味での鑑定が行われ始めたのは,美術館が整備され,その所蔵品の整理,研究,あるいはカタログ化が盛んになり,また美術史そのものの研究が飛躍的な展開を見た19世紀後半からである。イタリア人のG.モレリはその最初の重要な人物で,いわゆる〈モレリ式鑑定法〉の創始者として知られる。これは,画家の様式的・技法的特色,いわばその筆跡が最も端的に現れるのは人物の目,耳,手足,爪などの細部であるとし,この部分を重点的に比較研究する方法で,B.ベレンソンにも影響を及ぼした。モレリはまた鑑定においてはそれまでほとんど使われることのなかった写真の利用を最初に唱えた一人でもあった。一方,ドイツ人のボーデWilhelm von Bode(1845-1929)やM.J.フリートレンダーは長年の経験による直観力を重視する,いわゆる〈目利き〉のタイプである。現代の鑑定はこれらの方法に加え,科学技術の長足の進歩を反映して,物理的・化学的方法をも多分にとり入れている。たとえば1400年代の板絵の場合,その様式的な鑑定に加え,使われている板の種類による制作地域の鑑定も行われ,その他キャンバスや顔料,筆触などの分析も重要な意味をもっている。これらの結果を書式にし,鑑定人の署名をしたものがいわゆる〈鑑定書expertise〉であるが,その性格はきわめて私的な所見を述べたにすぎない覚書的なものから,ある程度法的な有効性をもつものまでさまざまである。日本と同様,欧米でも医師や弁護士のような国家試験によって認定された鑑定人の制度はないが,個々のケースでは裁判所が認定した一時的な法定鑑定人が存在することもある。たとえば,フランスではこうした場合,(1)レントゲン撮影や化学分析などに携わる鑑定人,(2)問題の作品の技法的・様式的側面を鑑定する芸術家(画家,版画家,陶芸家等),(3)作品自体の様式的・図像学的分析に加え,文献資料的な調査を担当する美術史家ないし美術批評家,の3者を立てるのが一般的である。
執筆者:千足 伸行
日本では室町時代の中ごろ,中国から美術品が多数輸入され,和漢の書画や道具類の鑑賞が武家,公家の間や禅林で盛んになった。その結果,個々の作品の時代や作者を推定し,その品等を定めることが望まれ,鑑定が求められたのである。とくに茶の湯の成立と流行によって,唐物を中心とした茶道具に書画をふくめた文物を鑑賞対象とする風潮が,これにいっそう拍車をかけ,幕府御用をつとめた相阿弥など阿弥衆や五山僧・茶人などがその衝にあたった。当時,鑑定は〈目利き〉といわれたが,必ずしも真贋を鑑定することではなく,その規準は〈数奇に入る〉ことであり,〈見立てる〉ことと〈掘り出す〉ことであった。つまり作品に新しい解釈と意味づけを与えることであり,だれも気づかなかった価値を見いだすことであった。鑑定家自身に経験と判断力が求められたわけである。やがて贋作が多く現れるようになると〈目利き〉に真贋判断の意味が加わり,鑑定を業とする専門家が現れる。桃山時代,刀剣の鑑定には本阿弥家(本阿弥光悦)が,書跡では古筆家(古筆了佐)が登場する。鑑定の証明には折紙が用いられ〈折紙付き〉の称がおこる。刀剣の銘鑑や古筆の手鑑(てかがみ)の集録もこのころから始まっている。江戸時代に入っても鑑定方式は踏襲され,鑑定の家系は世間的にも権威をもった。絵画では幕府御用をつとめた狩野派の宗家や長崎の唐絵目利きなどはその職を世襲した。
彼らは作品の伝来や作者の究明,価額について意見を求められ,それを鑑定したものが〈極(きわめ)〉であり,古筆家は〈極札〉を発行した。〈箱書〉も極の一種だが,箔をつける意味もあった。近代に入ると,文献的な考証や西洋美術史学の方法をとり入れた実証的な比較鑑定,さらに科学的方法が導入され鑑定法も発達する。しかし,真贋などが問われる作品を鑑定する場合規準となる作品の選定がつねに問われることになろう。
執筆者:衛藤 駿
古美術品の科学的鑑定法には,光学顕微鏡等による拡大観察,紫外線や赤外線等を用いて使用材料を推定する方法,X線やγ線を用いた構造の分析,古典的な検鏡分析や斑滴分析,放射化分析などを用いた微量分析による化学成分や組成の解明などがある。
もともとこれらは,古美術品鑑定のための方法ではなく,文化財の材質調査の基本的な方法で,文化財保存の科学的基礎データを得るために開発されたものである。光学的方法のうち作品に紫外線を照射する方法は発生する特有の蛍光を観察して,ニス,油,にかわ,顔料,補修部分(改ざん文書)等を判定する。赤外線の吸収作用を応用した方法に赤外線写真と赤外線テレビジョンがある。赤外線テレビジョンは,赤外線フィルムより広い近赤外領域に感度を持つ赤外線センサーを備えたカメラにより,ブラウン管上に直接影像をとらえることができ,油煙などによる汚れや,すりへって判読しにくい棟札や文書,土器の銘文や墨書の判読,下絵の解明等に利用される。従来の赤外線フィルム,赤外線カラーフィルムも,リモートセンシングの手法を取り入れて感度を向上させる種々の試みが行われている。
X線透視写真は,X線の透過作用により,絵画,彫刻,工芸品などの構造,顔料の塗り重ね,筆のタッチなどをさぐるのに用いられる。材質と厚さなど,対象により硬軟X線を使い分け,またX線では透過しない厚みのある金属製品は,ラジオアイソトープのγ線を用いることにより,鋳造技法などが明らかにされる。
以上の方法は,使われている材料,技法を推定する補助的手段であるのに対し,化学的組成などを直接分析する方法として,多くの機器分析がある。蛍光X線分析は非破壊的方法で元素分析ができるので,鑑定法の主流をなしている。形状によって若干の制限があるが,金属,顔料,陶磁器等,適用範囲も広い。また,X線回折分析は化合物の化学構造から材料を同定することができる。文化財の材質調査は非破壊的方法で行うことが原則であるが,微量の試料のサンプリングが,キャンバスの端や修理の際など限られた部分で可能な場合,得られた極微量の試料を,放射化分析,発光分光分析,原子吸光分析,X線マイクロ分析などにより元素分析を行って,材料の主成分から微量成分までを知り,X線回折分析,メスバウアー分光法などにより,化学種の状態分析を行って,焼成温度,その他の技法を知ることができる。また,熱発光法による年代測定,同位体比法による産地推定等も,対象は限られるが最新の測定技術を駆使した強力な方法といえよう。
これらの最新の分析技術による測定結果を鑑定に利用する場合,その数値の解析には,文化財に関する分析の長い経験と,細心の慎重さが必要である。また一つの方法で断定するのではなく,補助的手段を含めて,必ず複数の結果から総合的に判断されねばならない。
→偽作
執筆者:江本 義理
裁判官の有する知識経験は限られているので,裁判のために特別な知識経験が必要なとき,専門的知識を有する者や学識経験者などによりそれを補う手続(民事訴訟法212条以下,刑事訴訟法165条以下)。〈裁判官は法を知る〉たてまえであるが,たとえば外国人の夫との離婚事件に適用されるべき法律とその内容など,法律についても知識を補う必要がある。しかし,不動産の価格,父子の血液型,兇器の性能や構造,犯行時の精神状態等々,事実認定のために鑑定が必要となる場合のほうが多い。
鑑定に必要な知識経験を有する者は,出頭義務,宣誓義務など,鑑定人となって鑑定を行う義務を負う。鑑定人の有する特別な知識経験は,学習努力により得られたものであり,同程度の知識経験を有する者による代替が可能である。それゆえ,過去の個人的体験を述べ,代替性のない証人と異なり,裁判所への勾引は認められない(民事訴訟法216条)。ただし,鑑定人が鑑定経過や鑑定内容につき法廷で証言する場合(鑑定証人)には,証人と同様に扱われる。鑑定人は,裁判所へ出頭するための旅費,日当,宿泊費を請求できるほかに,鑑定料を請求し,鑑定に必要な費用の支払いまたは償還を受けることができる。
民事事件における鑑定人は,当事者の申出があるとき,裁判所が指定する。鑑定人が誠実に鑑定をしないおそれがあるとき,当事者は,その鑑定人を忌避できる。当事者の申出によらず裁判所が鑑定を必要と判断したときは,鑑定を嘱託する。この鑑定受託者には宣誓義務はない。実務では,当事者が鑑定を依頼し,鑑定結果を書証(鑑定書)として提出することも多い。
刑事事件においては,裁判所が鑑定人を選任して鑑定を命じる。当事者に忌避申立権はない。鑑定に必要な場合,鑑定人は,裁判所の発する鑑定留置状,鑑定処分許可状により,被告人を病院等へ留置する(鑑定留置),他人の住居へ立ち入る,墳墓を発掘する等の処分ができる。犯罪捜査遂行のために検察官や警察から鑑定を嘱託された鑑定受託者(刑事訴訟法223条)も,宣誓義務がない点を除き,鑑定人と同様である。
鑑定結果を無視した判断を裁判所が下すことは許されない。また,裁判所は鑑定結果に拘束もされない。鑑定人は,必要な分析を怠る,鑑定結果をねじ曲げる等は許されず,良心に従い誠実に鑑定しなければならない。しかし,誠実に鑑定しても,次のような3種の誤りを生じうる。(1)当該鑑定に必要十分な知識経験を欠いた者が選任された場合,および,鑑定時以後,分析手法がより発達して再鑑定が行われ,結果的に最初の鑑定の誤りが判明する場合。(2)科学的判断であり,確率としてしか結論を出せないにもかかわらず,100%であるかのごとく断定,断言する鑑定結果を示す場合。いわゆる有利な鑑定と不利な鑑定との対立は,この点に由来する。(3)分析手法等に誤りはないが,捜査機関の勇み足による証拠の捏造等により,鑑定人に渡され鑑定を求められた資料に誤りがある場合。
鑑定能力のすぐれた者ほど多忙であり,裁判所がこのような人物をあえて鑑定人に指定・選任すると,弟子にまかせて鑑定の誤りを生じたり,鑑定結果が出るまで長期間を要し,その間訴訟手続を停止せざるをえなかったりする。それゆえ,公正かつ有能な鑑定受託機関の確立が急務である。裁判官が,鑑定人を指定・選任し,鑑定結果により知識経験を補う際には,これらの限界にも,十分配慮しなければならない。
執筆者:荒木 伸怡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般的には、ものの真贋(しんがん)や品質のよしあしを調査のうえで見きわめたり、価格を決めたりすること。またそれを行う人を鑑定人という。専門的には、訴訟法上の鑑定、具体的には親子鑑定、筆跡鑑定、精神鑑定などがあり、また犯罪における科学捜査上の鑑定のほか、美術品の鑑定や商品鑑定、さらにこれらの科学的鑑定法などがある。ここでは、訴訟法上の鑑定と美術品の鑑定およびその科学的鑑定法について解説する。「親子鑑定」「筆跡鑑定」「精神鑑定」「商品鑑定」「科学捜査」については、それぞれの項目を参照のこと。
[内田一郎]
刑事訴訟法においては、特別の知識経験を有する者により、事実の法則またはその法則を具体的事実に適用して得た判断を報告すること。この報告をなす証拠調べの全体を鑑定ということも(刑事訴訟法1編12章)、鑑定人の活動自体を鑑定ということも(同法170条等)ある。鑑定人は、特別の知識経験に基づく判断を提供するものであるから、自己の体験事実を供述する証人とは区別される。なお、特別の知識経験に基づく者の過去の体験事実について尋問する場合は、鑑定人ではなく証人として扱われることとされている(同法174条)。いわゆる鑑定証人である。
鑑定は、裁判所が命ずるものであるが(同法165条)、捜査段階において捜査機関が鑑定を嘱託することもある(同法223条1項)。この場合に鑑定を嘱託された者は鑑定受託者とよばれる。鑑定事項は多岐にわたるが、人の死亡原因等に関する法医学鑑定や被告人の精神状態に関する精神鑑定等が多い。鑑定人は、出頭の義務、宣誓の義務、鑑定および鑑定結果の報告の義務を負う(同法166条、171条)。ただし、鑑定人には代替性があるので、召喚に応じない鑑定人を勾引(こういん)することはできない(同法171条)。鑑定人は、鑑定について必要があるときは、裁判所の許可を受けて、住居等への立入り、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘または物の破壊をすることができる(同法168条)。これを鑑定処分といい、裁判所の鑑定処分許可状によって行う。捜査段階で強制的に血液等を採取するときは、鑑定処分許可状のほか直接的な強制処分を可能とする身体検査令状を併用して実施している。ただし、尿の強制採取については、判例は、医師による等の条件を付した捜索差押許可状により実施しうるとしたので、実務はこのいわゆる強制採尿令状によって行っている。被告人の心神または身体に関する鑑定のために必要であるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる(同法167条)。これを鑑定留置という。
鑑定の結果は、口頭で報告することもできるが(同法304条)、鑑定内容が専門的で複雑である場合も多いことから、鑑定の経過および結果を書面にした鑑定書を提出することが一般的である。鑑定書は、書面であるから伝聞法則(同法320条1項)の適用を受けるが、一般の供述調書とは異なった取扱いがなされており、鑑定人が公判期日において尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、証拠として許容されることとなっている(同法321条4項)。鑑定の結果について、判例は、たとえば精神鑑定であっても責任能力は法律判断であるから鑑定の結果には拘束されないとしているが、鑑定結果を採用しえない合理的事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重すべきであるとしている。鑑定人は、旅費、日当および宿泊費のほか、鑑定料などを請求する権利を有する(同法173条)。
なお、民事訴訟法上は、裁判官の判断能力を補充するために学識経験のある第三者(鑑定人)の意見を求めることを目的とする証拠調べをいう(同法212条以下)。
[田口守一]
美術品には類同品が付き物である。模写、レプリカ(模造品)、贋作(がんさく)、複製物といったものを真作から区別するためには、専門家の判断が必要となる。それが鑑定という専門的行為である。原則として一品制作もしくは限定制作である美術品がオリジナルであるかどうかは、価値に関して多大の影響を及ぼす。そこで、大多数の美術品は鑑定されなければならず、現に鑑定されている。しかし、鑑定が容易でない複雑な作品がまれにあり、また、鑑定者の能力の不足による誤断もときにはあって、混乱が生ずる。さらに、長年の研究成果によって見解が変化する場合もあり、美術品の鑑定には不安定な要素が内在している。
完全で恒久的な鑑定はすべての美術品にはありえないとしても、学問と研究の進歩、そして資料の整備と機器の発達に伴い、以前とは比較にならぬほど、鑑定は確定性を増している。特定の目利きの経験的判断にゆだねられていた従来の鑑定法に対して、現代では、主として資料と機器を有効に利用することで客観的な妥当性へ至る道が開けてきた。
今日、鑑定は広く専門研究者の具有する能力となり、職業的鑑定家の仕事ではなくなっている。そして鑑定の結果も、単に文書を発行するとか、箱に書記するとかという、とかく誤解を生じやすい仕方ではなしに、写真や文献をかならず添付する方法に変化している。第二次世界大戦後までに受けた鑑定は、いま改めて新しい方法による再鑑定が必要である。
鑑定は多く個々の専門家の仕事として行われているが、国・公立の施設でもそれを重視し、最近ではそのための部門を充実させている。
美術鑑定は、真贋の区別とともに、その金銭的評価という部分を含む。その面をとくに行う専門家を欧米ではアプレイザーappraiserとよんでいる。
[瀬木慎一]
光学顕微鏡等による拡大観察、紫外線による蛍光作用により、ニス、油、顔料(がんりょう)等、それぞれの材料特有の蛍光を観察し、材料や補修部分を推定し、赤外線の吸収作用を応用して、油煙等に汚れた墨書を解読する。とくに赤外テレビジョンは、赤外線フィルムより広い近赤外領域に感度をもつ赤外線センサーを備えたカメラを用い、ブラウン管上に直接その影響をとらえることが可能で、材質によって異なる吸収作用から銘文の判読、下絵の解明等に利用される。X線の透過写真は、絵画、彫刻、工芸品等の構造をはじめ、顔料の塗り重ね、筆のタッチ、補修等を探るのに用いられる。材質と厚さによって硬・軟X線を使い分け、さらに厚みのある金属製品には、ラジオ・アイソトープのγ(ガンマ)線を用いて鋳造、鍛造等の技法が明らかにされる。
一方、化学成分や組成を明らかにする分析手段がある。文化財には非破壊的方法による材質調査が大原則で、蛍光X線分析、X線回折分析が用いられる。前者は元素分析で、後者は結晶構造から化合物を同定する方法である。また極微量の試料が採取できた場合は、放射化分析、発光分光分析、質量分析計による同位体分析等が行われ、微量成分の特徴が解明されて材料の時代や産地の推定が可能となる。
これらの方法で、ある時代に使われていた材料と製作技法にかなった作品であることが、複数の方法で総合的に判定できれば、それは本物であると判断される。
[江本義理]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…司法,美術,考古学等の鑑定に供する写真。鑑定には経験と知識に基づいた鋭い洞察と判断が必要とされているが,さらに科学的な鑑定による実証性,客観性を欠くことはできない。…
…事実認定は,検察官,被告人および弁護人の提出する証拠を基礎にして,裁判官が第三者の立場から合理的な経験則に基づいて行う。専門的な事項について鑑定がなされることもある。証拠はすべて許容されるわけではなく,強制等による不任意の自白は証拠能力がないし,伝聞証拠も原則として許容されない。…
…桃山~江戸時代の古筆鑑定家。近江国に生まれる。…
…ローマ時代になると医師アンティスティウスは,暗殺されたユリウス・カエサルの死体について,23ヵ所の損傷のうち,胸部への第2傷が死因であると判定した。すなわち,複数損傷における致命傷の鑑定である。1249年にはイタリアで,初めて裁判官の命により宣誓のうえ,法医学的な証言が法廷でなされた。…
…美術史の著述を始めたのは元老院議員になった1873年ごろ以降で,最初の数年間は本名のアナグラムであるロシア風のペンネーム,イワン・レルモリエフIvan Lermolieffを使った。当時流行の科学的実証主義を基盤として,絵画の作者決定(鑑定)を完全に科学的方法によって行おうとした。具体的には,彼は画中人物の耳や指など造型的に比較的重要でない部分に画家の癖や様式が表れるとし,それによる作者決定(いわゆる〈モレリ式鑑定法〉)を試みた。…
※「鑑定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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