合掌(読み)ガッショウ

デジタル大辞泉 「合掌」の意味・読み・例文・類語

がっ‐しょう〔‐シヤウ〕【合掌】

[名](スル)
仏教徒が、顔や胸の前で両の手のひらと指を合わせて、仏・菩薩ぼさつなどを拝むこと。インド古来の礼法で、仏教により日本に伝えられた。
小屋組で、2本の部材山形に組み合わせたもの。合掌組
合掌泳ぎ」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「合掌」の意味・読み・例文・類語

がっ‐しょう‥シャウ【合掌】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。仏教で行なう礼法の一つ。十本の手の指と、両方の掌を顔、胸などの前で合わせて、仏、菩薩などを礼拝すること。密教では一二種の型があり、十二合掌という。
    1. [初出の実例]「天平十九年爾時天皇即従座起合掌、仰天至心流」(出典:醍醐寺本元興寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. 「仏を見奉て、涙を流し給ふ事雨の如し、合掌(がっしゃう)して喜給ふ事无限(かぎりな)し」(出典:今昔物語集(1120頃か)二)
  3. 能楽で、両手を前に出し、掌を合わせて拝む型。
  4. 木造建築物の骨組構造にいう建築用語。
    1. (イ) 屋根などの部分で、二本の材木を山形に組み合わせたもの。
      1. [初出の実例]「ゆい橋の木数次第 一、合掌六本、長さ六いろ三尺」(出典:阿蘇学頭坊文書‐文明一三年(1481)正月一一日・阿蘇山衆徒年行事鹿渡橋用抄)
    2. (ロ) 西洋風の小屋組みで、母屋(もや)を受ける斜め材をいう。〔改訂増補日本建築辞彙(1931)〕
  5. がっしょうつい(合掌対)」の略。
    1. [初出の実例]「其七言近体中、警聯殊多。但未駢麗合掌」(出典:日本詩史(1771)一)
  6. がっしょうひねり(合掌捻)」の略。
  7. がっしょうおよぎ(合掌泳)」の略。
  8. 江戸時代、銭の数をいう隠語。
    1. (イ) 銭二百文をいう。大工などが用いる。
      1. [初出の実例]「がっしゃうはむね上(あげ)に出すしうぎ也」(出典:雑俳・川柳評万句合‐安永七(1778)満一)
    2. (ロ) 銭三百文をいう。駕籠(かご)かきなどが用いる。
      1. [初出の実例]「弐百の事を『ひゃうし木』、三百を『がっしゃう』」(出典:洒落本・品川楊枝(1799))

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改訂新版 世界大百科事典 「合掌」の意味・わかりやすい解説

合掌 (がっしょう)

左右の手のひらを胸または顔の前で合わせること。仏や菩薩などを礼拝するときの作法であるが,仏教徒の間では日常の挨拶にも用いられる。サンスクリットのアンジャリañjaliの訳。合掌は古くからインドで行われていた敬礼きようらい)作法の一種で,それが仏教にも取り入れられたものである。インド人は,右手は清浄,左手は不浄を表すとみて,これら両手を使い分ける習慣があるが,仏教でも右手を仏,左手は衆生(しゆじよう)を表すものとして,これらを合わせたところを,仏と衆生が合体した姿,すなわち成仏の相(そう)を表すものと考える。密教ではさらに左右の手と指にそれぞれ特別の意義と名称を与え,これらの合わせ方によって12の型を区別する。これを〈十二合掌〉といい,〈六種拳〉とともに印相(いんぞう)の基本をなすものとされる。十二合掌とは,(1)堅実心,(2)虚心(こしん)(空心),(3)未敷蓮華(みふれんげ),(4)初割蓮,(5)顕露,(6)持水,(7)帰命(きみよう)(金剛),(8)反叉(ほんさ),(9)反背互相著(ほんぱいごそうぢやく),(10)横拄指(おうちゆうし),(11)覆手向下,(12)覆手,の各合掌のことであるが,そのうちでも特に基本となるのは,両手と指をぴったり合わせる(1)の堅実心合掌と,両手の掌(たなごころ)を合わせ,右が上になるように十指の頭を交差させる(7)の帰命(金剛)合掌である。
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普及版 字通 「合掌」の読み・字形・画数・意味

【合掌】がつしよう(しやう)

仏に礼拝する礼。〔南史、循吏、虞愿伝〕(南斉の明)、疾に寢(い)ぬ。愿、常にに侍す。~大漸(たいぜん)(危篤)の日、正坐して人を呼び、合掌して(すなは)ちゆ。

字通「合」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「合掌」の意味・わかりやすい解説

合掌
がっしょう

両方の手のひらをあわせ、胸あるいは額に当てて行う礼拝の表現。サンスクリット語およびパーリ語のアンジャリañjaliの訳語。インド古来の敬礼法の一種。その様式には、十指をそろえて手のひらをあわせる通常の合掌、十指を交互に組み合わせる叉十(しゃじゅう)、握り手を他方の手で覆う叉手(しゃしゅ)などがあり、いずれも輪と十字に象徴される統合、中心を示している。また右手優先の観念は世界にほぼ共通するが、清浄な右手と不浄な左手との合一からなる合掌は、聖と俗の両面にかかわる人間の純真な祈りの姿にほかならない。仏教では、とくに真言密教において合掌を12種に分類し、それぞれに独自の解釈を与えたが、一般に仏や菩薩(ぼさつ)を念じる場合、礼拝する場合、あるいは僧や信者の間で挨拶(あいさつ)を交わす場合に用いられる。建築にみられる合掌造や合掌鳥居、能楽における合掌の型、さらには合掌泳ぎ、相撲(すもう)の合掌ひねりなど、日本の文化に占める合掌の比重も少なくない。

[片山一良]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「合掌」の意味・わかりやすい解説

合掌
がっしょう
añjali

古くからインドで行われた礼法。左右の手のひらと指をそろえて合せ,礼拝すること。現在でもインドおよび東南アジアの人々は互いに合掌して敬礼する。

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葬儀辞典 「合掌」の解説

合掌

両方の手を合わせて礼拝すること。

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世界大百科事典(旧版)内の合掌の言及

【小屋組み】より

…はり間寸法の大小でいろいろな形式があるが,図-cに示す真束(しんづか)小屋組みと呼ばれるものがもっとも代表的なものである。和風小屋組みと基本的に異なるのは,母屋を,合掌と呼ばれる登りばりで受け,その合掌が左右に開かないように小屋ばりで結ぶところである。このため,小屋ばりは引張力だけを負担することになり,比較的細い部材ですむ。…

【垂木】より

…古建築ではもっと間隔が狭く,部材のあきが垂木の成(せい)(長さ,幅に対して下端から上端までの垂直距離をいう)と同じものを本繁(ほんしげ)割り,垂木の成と幅の和と同じものを半繁割りという。ふつう垂木にかかる屋根の荷重は棟木や母屋,軒桁を通じて下方に分散されるが,棟持柱や真束(しんづか),小屋束がなく,すべての屋根の荷重が直接二列の壁の上端に集中するような垂木の組み方を垂木構造ともいい,その場合の部材は力垂木,または合掌として区別される。【太田 邦夫】。…

【挨拶】より

…ビルマ(現,ミャンマー)やマレーシアやエスキモーには鼻をよせて相手のにおいをかぐ挨拶があるが,それらは接触と非接触の中間形態といえよう。身体的接触を伴わない身ぶりとしては,日本人のするようなおじぎ,インドのヒンドゥー教徒や東南アジアや日本の仏教徒がする合掌(インドでもイスラム教徒は抱擁するのがふつうである),あるいはマオリ族が行う舌を出す挨拶などがあげられる。西洋人も国王に拝謁する際には,男は頭を下げ,女は片足を引いてひざを軽く折って挨拶するのが作法である。…

※「合掌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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