吹走流(読み)すいそうりゅう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

吹走流
すいそうりゅう
drift current

海面に働く風の力(接線応力、ずり応力)により、海水が引きずられて起きる定常運動。20世紀の初めにこの運動を初めて論じたエクマンVagn Walfrid Ekman(1874―1954)の名を冠して、エクマン吹送流ともいう。海面の水が動くと、海水の粘性(うず粘性)の働きで下の水も引きずられる。この運動に伴ってコリオリの力が生ずる。コリオリの力と粘性抵抗とがつり合っている運動が吹送流である。コリオリの力のため、海面の水は、北半球では風下から45度だけ右に、南半球では風下から45度だけ左にずれた向きに流れる。
 吹送流は表層の流れで、高緯度から低緯度に向かって厚くなるが、その厚みは数メートルから数十メートル程度である。この厚み全体としては海水は風下に対して90度右(北半球)、または90度左(南半球)に流れ、その流量は風の応力の大きさに比例する。風の強さは場所によって変わるから、吹送流が運ぶ水量も場所によって変わる。その結果、表層海水は、ある場所では寄り集まり(収束)、別の場所では散り去る(発散)。海水は、収束の場所では下層に沈み込み、発散の場所では下層の海水が湧き上がってくる。吹送流は薄い表層に限られた運動であるが、こうして発散と収束を通じて下層の海水の運動にも関与している。海水を下層から汲み上げたり、下層に押し込んだりしているともいえるので、この働きをエクマンポンプという。下層では植物プランクトンの栄養分が豊富なので、風が発散を引き起こす海域は表層も栄養分が豊かになる。逆に収束海域では栄養分は乏しくなる。太平洋や大西洋の風系の基本は低緯度で東風、中緯度で西風であり、この風系では収束海域が発散海域よりもはるかに広くなり、貧栄養海域が広くなる。[高野健三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の吹走流の言及

【海流】より

… 海流をその原因によって分類することが昔から行われてきた。そこで便宜上例えば,吹走流(風の応力でできる流れ),傾斜流(海面傾斜によるもの),密度流(海水の密度差に起因するもの),補流(ある海域の水がなんらかの原因で流れ去るとその分を補うため他から海水が流れてくる)などの言葉を使うことがあるが,もともとこれらを含めて複雑な要因がからみ合って一つの海流を形成するのであるから,上記の分類で海流をはっきり区別するのは無理がある。 このほか,実生活上よく使われる分類として暖流と寒流があるが,科学的には厳密さを欠く分類法で,二つの海流が接している時に温度の高い方を暖流,低い方を寒流と呼んで区別するのに便利だという程度の意味である。…

※「吹走流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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