妊娠満22週から生後満7日未満までの期間を指す医療。日本の妊産婦死亡率は国際的に最も低い水準にある。一方で、2008年に東京都内で複数の病院に受け入れを断られた妊婦が死亡した問題を機に、他科や周囲の医療機関との連携が課題とされてきた。災害が起きた際の妊婦や新生児の適切な搬送や近隣自治体との情報共有の体制構築も急務となっている。
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周産期(妊娠22週から生後満7日未満の期間)前後における医療。この期間は、母体や胎児、新生児の生命にかかわるさまざまなトラブルの可能性が考えられるため、産科、小児科の協力による総合的な医療体制が提唱されている。
周産期医療の客観的な指標とされてきた妊産婦死亡率・新生児死亡率の低さでは、日本はすでに1960年代から世界のトップクラスであったが、厚生省(現、厚生労働省)は1996年(平成8)、さらなる充実を目ざして周産期医療対策整備事業を開始した。ハイリスクの妊婦を管理する母体・胎児集中治療室(MFICU:maternal-fetal intensive care unit)、低体重や先天性疾患に対応する新生児集中治療室(NICU:neonatal intensive care unit)、搬送システムなどを完備し、合併症妊娠、重症妊娠中毒、切迫早産、胎児異常などに対応できる周産期母子医療センターを少なくとも各県に1か所以上設置することを目ざしている。そうした成果もあり、日本の妊産婦死亡率は、2010年(平成22)は出生10万に対し5で、イタリアとスウェーデンの4よりやや多いが、ドイツ7、イギリス12、アメリカ21を下回る(出典:CIA The World Factbook)。また、妊娠満28週以後の死産率(周産期死亡率)は、日本は出生数1000当り1.8(2013)で、アメリカ2.9(2009)、ドイツ3.6(2012)、イギリス4.8(2012)より少ない(出典:国際連合 Demographic Yearbook)。その一方、2004年の臨床研修制度の改革前後から、激務と訴訟増などのため全国的に産科医が減少し、一般診療所・病院における周産期医療維持が困難な地域が広がりつつある。
[田辺 功]
(安達知子 愛育病院産婦人科部長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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