改訂新版 世界大百科事典 「品質保証」の意味・わかりやすい解説
品質保証 (ひんしつほしょう)
quality assurance
QAと略称することが多い。JISにおいては,〈消費者の要求する品質が十分に満されることを保証するために,生産者が行なう体系的活動〉(JIS Z8101)と定めている。この品質保証の目的を達成するために,生産者は市場における消費者のニーズや製品の使用条件をよくしらべ,これにもとづいて商品企画を立てることから始まり,研究開発や製品設計を行い,生産準備,生産,販売およびアフターサービスに及ぶ各段階において品質を確保する活動を行うことになる。
品質管理の活動の中においては,品質の意味をQ(品質quality),C(コストcost),およびDまたはM(納期deliveryまたは量mass)の三つに分けてとらえ,これらをそれぞれ,品質保証,利益・原価管理,および納期または量管理の三大機能別管理によって体系づけているが,品質保証はこれらの中の第一義的な機能別管理といえる。
品質保証を効果的に達成するために,商品企画,設計審査,試作試験,工程管理,検査および市場の顧客対応など多くの管理活動を確実に実施することが要求される。品質保証が不十分のために,市場において使用されている製品やシステムに重大欠陥が発生したり,使用している機材や設備のシステムに安全環境に悪影響を及ぼす事故故障を起こすと,製品責任product liability(PLと略称する)問題を招くことになり,場合によっては企業のトップが責任を問われたり,企業の存立にかかわる損害賠償を求められることになる。
品質保証の概念は,社会において複雑なシステム(たとえば電子システム,航空機,自動車,原子力発電所など)の使用が多く見られるようになった1960年前後より芽ばえ始め,62年に当時のケネディ・アメリカ大統領の提唱した消費者擁護政策の中で消費者の安全を求める権利や知らされる権利などが認識されるとともに,急速に各製造企業の中に確立されるようになった。現在,多くの企業および工場には品質保証部または品質管理部と呼ばれる部門が存在し,ここで,各種の品質保証活動の総括をすることが常とされている。
執筆者:真壁 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報