改訂新版 世界大百科事典 「商品分類」の意味・わかりやすい解説
商品分類 (しょうひんぶんるい)
商品はその目的により,いろいろな分類の方法がある。最も一般的に用いられる分類方法としては,商品の使途による分類である。
使途による分類
商品はその使途により,消費者商品と産業用・業務用商品とに分けられる。消費者商品は,消費財とも呼ばれ,最終消費者が利用する商品である。自己の家庭用,娯楽用その他の目的で消費し,原則として再加工したり,再販売しない。消費財は,その購買慣習により,最寄品,買回り品,専門品に分けられる。
最寄品は,食料品,日用雑貨品のように購買頻度が高く,習慣的に購入するものであり,単価は小額で,購買のための時間に長時間かけることはしないものである。したがって,どこで買っても値幅の開きは少ないから,住宅の近くの小売商で求める手近品である。買回り品には衣料品を主体として,ハンドバッグ,靴などの身回り品があり,購買動機や機会も単純ではなく,何軒かの商店を回ったうえで,自己の最も満足する商品を求めて買う選択購買品である。専門品は,高級衣料,ピアノ,装身具などのように,その購入にあたって計画的であり,かつ相当の努力を払うものである。商品の品質,意匠,型などに制約があり,購入のためには一般に信用のある商店を選ぶ。また購入頻度は非常に低く,単価は高いのが普通である。
産業用・業務用商品は生産財とも呼ばれる。分類としては,主要設備,補助設備,消耗用品,組立・構成部品,加工材料,原料に分けられる。
生産面や性状からみた分類
次に商品を生みだす生産の面からみると,産業の業態によって農産品,畜産品,林産品,水産品,鉱産品,工産品に分かれ,工産品はさらに繊維工業品,機械工業品,化学工業品,合成化学工業品,醸造工業品,窯業品,工芸品,雑工業品などに細かく分けられる。その生産加工の程度の精粗を標準にしてとらえると,天然の産物を採ったままの未製品,それに若干の簡単な処理を加えた粗製品,綿糸や生糸のように原料用に作られた半製品,さらにこれを最終的に製了した全製品または精製品に分けられる。こうして生まれた商品は,その本来の性状によって,個体商品,粒状商品,粘体商品,液体商品,気体商品,粉状商品,膠質(こうしつ)商品に分けることもできる。また,資源の発生から分けると有機質商品と無機質商品にも分類できる。有機質商品には植物性商品,動物性商品とがあり,無機質商品には鉱物性商品,食塩,化学薬品,鉱物性繊維類とがある。
日本標準商品分類
日本標準商品分類は行政管理庁の統計審議会の議を経て,1950年に制定されたものである。分類方法は,アメリカ標準商品分類を模し,これに日本の特色を加味し,さらに55年の改訂の際に国際連合による標準貿易分類との関連を考慮したものを改めたものである。その後この分類方法は,工業統計調査,生産動態統計調査をはじめ商品別を必要とする諸統計調査に用いられるものなので,実情に即した商品分類を改正することが必要なため,改訂を経て現在のものは90年に改訂されたものである。
この日本標準商品分類における商品の範囲は,価値ある有体的商品(電力を含む)の全部であり,組立家屋,骨董(こつとう)品,スクラップ,ウェイストなどは含まれているが,土地,家屋,立木,地下にある資源などは含まれていない。したがって商品の全分野を網羅し,これを原則として6けた段階まで細分してある。商品項目は最下位のものであっても,個々の商品ではなく商品集団を示すもので,全商品を重複,脱漏なく,いずれかの分類項目に編入しうることになる。この分類の最大の目的は,商品を類似するものごとに集括し,商品分類を要する統計の作成表示の要具とすることである。このために索引に便利であるように配列することも重要で,このため類似商品を集括する分類原理としては,(1)商品の成因,(2)商品の材料,(3)商品の用途,(4)商品の機能などが考えられる。そして,これらのうち,一つの原理のみによっては望ましい分類は得られないから,必要に応じていくつかの原理を混用している。たとえば非食用の動物,植物,鉱物についてはだいたい成因で分類し,基礎資材については材料が主要な分類原理となる。また完成品については用途や機能が重要な分類原理となる。
分類の構成は,まず個々の大分類に区分し,それをさらに個々の中分類に区分し,これを示す項目名の前に2けたの数字符号が付されている。したがって,この番号を読めば,だいたいいずれの大分類に属するかがわかると同時に,中分類の位置もわかるようになっている。このようにして,さらに各中分類は必要とされる商品の詳細に応じて,3けた,4けたあるいはそれ以上のけたに細分されている。また部分品を完成品と区別する必要のある場合や新品と古品に区別する必要がある場合は,補助分類が用いられている。ここで日本標準商品分類の全商品を網羅することはできないので,大分類のみにする。
大分類は,以下の10の分類に分けられる。大分類1 粗原料およびエネルギー源(中分類9。小分類56。以下同様)。大分類2 加工基礎材および中間製品(17。143)。大分類3 生産用設備機器およびエネルギー機器(19。120)。大分類4 輸送用機器(6。34)。大分類5 情報・通信機器(4。21)。大分類6 その他の機器(13。88)。大分類7 食料品,飲料および製造タバコ(8。42)。大分類8 生活・文化用品(19。165)。大分類9 スクラップおよびウェイスト(1。9)。大分類0 分類不能の商品(1。-)。中分類合計97,小分類合計678で,この下に細分類3634,細々分類1万1400があり,6桁分類1万3757を数える。
以上のように,標準商品分類は,分類原理として商品のもつ機能を重視しながら用途主義をも加味した利用上の利便性を重視して作成されたものである。
執筆者:久保 匡博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報