商工会議所(読み)しょうこうかいぎしょ

精選版 日本国語大辞典 「商工会議所」の意味・読み・例文・類語

しょうこう‐かいぎしょ シャウコウクヮイギショ【商工会議所】

〘名〙 商工業の改善・発展目的として、都市、または一定地域の商工業者で結成される非営利的な経済団体。経済調査、調停、技能検定行政官庁への建議、貿易振興などを行なっている。中央機関として日本商工会議所がある。
東京日日新聞‐明治一五年(1882)九月一三日「堺港の商法会議所は〈略〉今度商工会議所と改称せしは」

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デジタル大辞泉 「商工会議所」の意味・読み・例文・類語

しょうこう‐かいぎしょ〔シヤウコウクワイギシヨ〕【商工会議所】

商工会議所法に基づき、市など一定地区内の商工業者によって組織される自由会員制の非営利法人。商工会議所としての意見の公表・具申・建議、調査研究、証明・鑑定・検査、技術や技能の普及・検定、取引の仲介・あっせんなどを行う。中央機関は日本商工会議所。→商工会

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改訂新版 世界大百科事典 「商工会議所」の意味・わかりやすい解説

商工会議所 (しょうこうかいぎしょ)

都市等の一定地域内における商工業者の団体で,地域の商工業の改善発達を図るための組織。日本では1953年の商工会議所法に基づき,東京,大阪をはじめ全国の主要都市に設けられている。主たる事業は,商工業なかでも中小企業に関する,調査研究,意見の発表,政府や国会への建議,商工業の指導,見本市の開催,国内や外国の業者の取引あっせん等である。東京にある日本商工会議所(日商)は全国の商工会議所の中央機関で,各地の商工会議所を会員とする。

欧米ではchamber of commerce商業会議所)などというが,構成員は商工業者からなる地域的な団体であり,日本と類似している。今日,商工会議所は世界各国にあるが,その起源は1599年にフランスのマルセイユに設立された団体といわれている。商工会議所の性格はヨーロッパ大陸とイギリスならびにアメリカでは異なり,前者は公的色彩が強く行政事務の一部を担当しており,公法人である場合も少なくないが,後者では純然たる任意の民間団体である。国際組織として国際商業会議所International Chamber of Commerce(ICC)があり(1920年パリで成立),日本も第2次大戦後再加入,国内委員会(会員は日商,経団連,大企業等)を通じて会員諸団体・企業が加入している。

1878年(明治11)に今日の東京商工会議所の前身である東京商法会議所が発足し,同年に大阪と神戸にもそれぞれ商法会議所が誕生した。これは世界的にみて決して遅いほうではなかった。この会議所は英米系統の会員制の任意団体の性格をもっていた(その後に数回の改編があり,大陸系統の議員制の法的団体の形をとった期間も長かった。第2次大戦終了後,再び会員制英米型に戻り,さらに1953年の現行商工会議所法によって英米型と大陸型の折衷型の組織になった)。商法会議所は,その後1890年9月公布の商業会議所条例により商業会議所に受け継がれた。商業会議所は,1927年4月公布の商工会議所法により,実体に合わせて商工会議所となり,組織も法人企業と個人企業とから構成し,個人の選挙・被選挙権廃止し,同時に重要商工業種の代表者を議員に加えた。また全国組織としての日本商工会議所もこのときに法定された。当時,日本経済は金融恐慌から世界恐慌に巻き込まれて深刻な不況のなかにあり,とくに中小企業で経営困難に陥るものが多かったので,商工会議所はその対策に協力した。今日,商工会議所の重要な活動の一つが中小企業対策であるが,これはこのとき以来のものである。1941年太平洋戦争に突入すると経済界への統制が著しく強化され,商工会議所も統制経済の連絡調整の役割を課された。

 1945年の終戦を契機とした経済民主化の流れのなかで,全国各地の商工業者は,民法に基づく社団法人組織による商工会議所を設立した。これは,それまでの強制加入の公法人である商工会議所(ただし1943-45年は商工経済会)から,民主的な会員制の任意団体としての会議所に変わったことを意味した。ところが,戦後各地に数多く設立された会議所のなかには,必ずしも基礎が強固でないものもあり,あるいは会議所の本質から逸脱するものもみられたため,50年に商工会議所法が公布施行され,会議所の組織と活動の準則が示された。さらに53年にそれを全面改正した現行商工会議所法が公布施行されたが,これは,会議所がその機能を十分に発揮するためには,強固な法的基盤に立つことが必要と考えられ,また広く国際交流を図ることのできる体制を整えるためであった。その後,日本経済の高度成長の時代から第1次石油危機後の安定成長の時代を通して,商工会議所は地域商工業の振興に努めるとともに国際交流・親善活動等を行っている。

商工会議所は,商工会議所法により原則として市を地区とし,その地区内に引き続き6ヵ月以上営業所・事業所等を有する商工業者によって組織され,会員資格を有する者30人以上が発起人となって設立し,地区内の特定商工業者の過半数の同意を得たうえ,通産大臣の認可を受け登記することで成立する。なお,市の商工会議所にほぼ相当する,おもに町村の組織に商工会(1960年制定の〈商工会の組織等に関する法律〉に基づく)があるが,その設立要件は商工会議所と大差ない。全国の商工会の中央組織として全国商工会がある。また日本青年会議所は,1949年設立の東京青年商工会議所を前身として51年に設立されたが,商工会議所を母体に生まれたものである。会員は20~40歳の年齢制限がある。
経営者団体
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「商工会議所」の意味・わかりやすい解説

商工会議所
しょうこうかいぎしょ
chamber of commerce

1953年(昭和28)制定の「商工会議所法」に基づき設立された非営利の法人組織で、国民経済の健全な発展を図り、かつ国際経済の進展に寄与することを目的としている。この目的を達成するために次のような事業を行う(同法9条)。

 意見の公表、建議、諮問への答申、商工業に関する調査研究、情報・資料の収集・刊行、商品や事業内容などの証明・鑑定・検査、輸出品の原産地証明、施設の設置・維持・運用、講演会・講習会の開催、技術・技能の普及・検定、博覧会・見本市などの開催もしくは斡旋(あっせん)、商事取引の仲介・斡旋、取引紛争に際しての斡旋・調停・仲裁・相談・指導、信用調査、観光事業の改善、社会一般の福祉に資する事業、その他である。商工会議所は原則として市を地区として設立される。会員は、その地区内において引き続き6か月以上営業している商工業者でなければならない。設立にあたっては、以上の資格をもつ30人以上の者が発起人となることが必要で、役員として、会頭1人、副会頭4人以内、専務理事1人、監事2ないし3人を置き、そのほか一定数の常議員を置く。

 各地の商工会議所すべてを会員とする中央機関として、東京に日本商工会議所が設けられている。同会議所は全国の商工会議所を総合調整し、その意見を代表し、国内・国外の経済団体と提携することにより、商工会議所の健全な発達を図り、商工業の振興を目的としている。

[森本三男]

商工会

商工会議所に相当する町村の組織が商工会である。1960年制定の「商工会法」(当時は「商工会の組織等に関する法律」。1993年に現名称に改題)に基づき、町村における商工業の総合的な改善発達を目的として設置された。法人組織の非営利団体で、原則として一つの町村を区域として設立される。会員となる資格は、その地区内において引き続き6か月以上営業している商工業者で、商工会は会員の資格を有する15人以上の者が発起人となって設立され、会長1人、副会長2人以内、理事30人以内、監事2人以内からなる役員を置き、商工業の相談・指導、情報の収集・提供、調査研究、講習会・展示会の開催、施設の設置・維持・運用などを行う。

[森本三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「商工会議所」の意味・わかりやすい解説

商工会議所
しょうこうかいぎしょ

商工会議所法 (昭和 28年法律 143号) に基づいて設立される法人組織の非営利団体。市または一定地域を区域とし,区域内の一定資格の商工業者を会員として,その区域の商工業の総合的な改善発達をはかり,あわせて社会福祉の増進に資することを目的とする。日本においては 1878年渋沢栄一らにより東京商法会議所が誕生,その後大阪,名古屋などにも設けられたが,これらは法人格をもつものではなく,90年の商業会議所条例の公布をまって,市町村を区域とする法人としての商業会議所が神戸をはじめ全国 60ヵ所に設立された。さらに 1902年の商業会議所法を経て,27年これを引継いだ商工会議所法が制定され,翌年全国の商工会議所の中央組織としての日本商工会議所が設立された。第2次世界大戦中に同法が廃止され,43年商工経済会法制定に基づいて府県単位の国策協力機関に改組されたが,戦後各地に任意組織の商工会議所が設立されるにいたり,53年現商工会議所法の制定により,特殊法人として地域別総合経済団体として発足した。事業内容は商工会議所としての意見の公表,行政庁などへの具申・建議,商工業に関する調査研究,情報・資料の収集・刊行,商品の品質・数量や商工業者の事業内容などに関する証明・鑑定・検査,講習会・見本市の開催および斡旋,商取引の仲介・斡旋および紛争の処理,信用調査,経営相談・指導,技術・技能の普及・検定など (商工会議所法9) 商工業全般にわたっており,この点から通商産業大臣の監督が強く行われている。各地商工会議所の中央組織として日本商工会議所 (日商) がある。 (→商工会 )

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百科事典マイペディア 「商工会議所」の意味・わかりやすい解説

商工会議所【しょうこうかいぎしょ】

都市などを単位地域とする商工業者の経済団体。地域の商工業(とくに中小企業)の改善発達,社会福祉の増進を目的とし,経済調査,政策の具申,取引斡旋(あっせん)などを行う。欧米では一般に商業会議所という。日本では1878年東京と大阪,神戸に商法会議所設置以来,各地に広まった。その後商業会議所条例(1890年)などを経て,現在は商工会議所法(1953年)に基づき,原則として市単位に,通産大臣の認可を得,登記によって成立。任意加入,企業規模は問わない。→日本商工会議所

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「商工会議所」の解説

商工会議所
しょうこうかいぎしょ

商工業者により地域別に組織された経済団体。1927年(昭和2)の商工会議所法により,前身である商業会議所の組織を引き継いだ。法人・個人企業の代表者が議員の選挙権・被選挙権をもつほか,地域の重要産業からも議員が選出される。商工業に関する通報,仲介・斡旋,調停・仲裁,証明・鑑定,統計調査などのほか,建議・答申も行う。全商工会議所の加盟組織として日本商工会議所がある。第2次大戦中は商工経済会法によって府県単位の商工経済会に改組されたが,戦後同法の廃止で任意団体として復活し,50年の商工会議所法,53年の新商工会議所法をへて特殊法人となる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「商工会議所」の解説

商工会議所
しょうこうかいぎしょ

商工業の改善・発達を目的として,都市または一定地域内の商工業者が結成した経済団体
起源は江戸時代の町会所にあり,1877年渋沢栄一らが東京商法会議所を設立。1927年商工会議所と改称。商工会議所は1市1会議所を原則とした。'50年第二次世界大戦前の趣旨を再確認する商工会議所法,'53年新商工会議所法が制定された。

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世界大百科事典(旧版)内の商工会議所の言及

【商人】より

…そのため商業自由化によって,かえって取引が停滞するという弊害も生まれた。その対策として1870年代以降,商工業者をそれぞれ同業組合として組織化し,さらに地域ごとに諸同業組合を総轄する商法会議所,商業会議所(商工会議所)が東京,大阪,京都をはじめとする諸都市に設置されるようになった。こうして問屋,仲買,小売の諸商人は同業組合に加入し,商法(商業)会議所によってその利害を代弁されるようになった。…

※「商工会議所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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