私法人に対する観念であり,〈公法上の法人〉または〈公の法人〉ともいう。この観念は,国および公共団体を指す意味で用いられる場合と,国以外の公共団体のみを指す意味で用いられる場合とがある。公共団体とは,地方公共団体(都道府県,市町村など),公の社団法人である公共組合(土地区画整理組合,土地改良区,共済組合など)および公の財団法人たる営造物法人(公社,公団など)である。
国家法人説は,国が私法関係においてあらわれる場合のみならず,公権力を行使するなどの特別の地位において活動する場合においても,国を法人としてとらえようとしたものであり,国を法の拘束のもとにおくという点で積極的な役割を有したが,この場合,国は公法人と呼ばれることがある。ここでは,公法人の観念は,国家法人説と結びついて意味をもっている。
これに対して,国以外の団体を公法人という場合,この観念は,それらの団体が法人であることを示すとともに,私法人との対比においてその公共的な性質を強調するという意味あいが強い。すなわち,その法的特質として,その設立が国の意思によっており,その目的が法律によって定められていること,社員の加入が強制されること,一定の国家的公権(例,経費の強制徴収の権限)が認められること,解散の自由がないこと,国の特別の監督に服することが挙げられる。
ただ,現行の法律をみると,公共的性格を有する団体が公法上の法人であることが明規されている場合もあるが(国民金融公庫,住宅金融公庫),単に法人と定められている場合が通常である(地方公共団体,日本銀行,NHK,道路公団,中小企業金融公庫,各種共済組合,土地区画整理組合,土地改良区など)。そして,これらの団体は,公法人であるか否かを問わず,公共的な目的を追求しているのであり,その際,法律によって直接に,あるいは,法律の定めるところに従い国や地方公共団体によって,規制・監督をうけている。さらに,このような規制・監督は,私人によって営まれている学校法人,社会福祉法人,電気・鉄道事業についても行われているが,これはそれらが私益を追求するとともに,一面において公益に資するものであることによる。
次に,公法人に関する法関係は,当然に公法関係として民商法の適用を排除するものではなく,また,この法関係に関する争いが当然に行政訴訟の形式をとることになるわけでもない。
公法人の観念は歴史的には一定の意味を有したといえるが,この観念を用いて行政法の諸問題を論ずる必要性は乏しいように思われる。
執筆者:芝池 義一
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国、地方公共団体、公共組合、公団、金庫、公庫、公共企業体などのように、国家的目的のもとに行政権を付与される法人。
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