日本大百科全書(ニッポニカ) 「問屋営業」の意味・わかりやすい解説
問屋営業
といやえいぎょう
自己の名をもって、委託者の計算で、物品(有価証券を含む)の販売または買入れをなす営業。その営業の主体たる商人を問屋といい(商法551条)、取次商の一種である。問屋は自ら権利義務の主体として取引の相手方との間に売買契約という法律行為をする点で、媒介という事実行為をするにすぎない仲立人や媒介代理商と異なるし、また、自己の名において行為をするもので、委託者の名で売買契約を締結するものではない点で、締約代理商その他の代理人と異なる。また、特定の商人と継続的関係にたつものではない点で代理商と異なる。問屋は委託者の計算において売買する者であり、取引から生ずる損益はすべて委託者に帰属するので、このような関係を間接代理ということもある。問屋は売買の相手方との関係においては、売買契約の当事者として権利義務の主体となるが、委託者と問屋の相手方との間には直接の法律関係はない。このように、問屋は、法律的には売買契約の当事者として権利義務の主体となるが、経済的には契約から生じた損益は委託者の負担に帰し、問屋は手数料ないし報酬を受けるにすぎない。問屋と委託者との間の取次契約の法的性質は委任契約であり、委任関係に基づく受任者としての一般的権利義務を有するほか、商法は、通知義務、履行担保責任、指値(さしね)に従う義務や、報酬請求権、留置権、介入権、供託・競売権などにつき、特別の規定を置いている。問屋制度は、企業活動の範囲を拡大する手段としての経済的機能をもつが、委託者としては問屋の信用と営業的手腕を利用することにより、また、問屋の相手方としては問屋の信用状態を調査すれば足り、かならずしも委託者本人の信用や資力などを調査をする必要がない点で便益がある。
[戸田修三]