喉元過ぎれば熱さを忘れる(読み)ノドモトスギレバアツサヲワスレル

デジタル大辞泉 の解説

喉元のどもとぎればあつさをわすれる

熱いものも、飲みこんでしまえばその熱さを忘れてしまう。転じて、苦しい経験も、過ぎ去ってしまえばその苦しさを忘れてしまう。また、苦しいときに助けてもらっても、楽になってしまえばその恩義を忘れてしまう。
[類語]暑さ忘れてかげ忘る雨晴れてかさを忘る魚を得てうえを忘る

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精選版 日本国語大辞典 の解説

のどもと【喉元】=過(す)ぎれば[=通(とお)れば]熱(あつ)さを忘(わす)れる

  1. 熱いものも飲み込んでしまえば、熱さを忘れてしまうことから、苦しいことも、それが過ぎると簡単に忘れてしまうことのたとえ。また、苦しい時には人を頼み、苦しさが去って楽になればその時受けた恩を忘れてしまい、ありがたく思わないことのたとえにもいう。
    1. [初出の実例]「のどもと過てあつさ忘るるとは此事」(出典:浄瑠璃・源氏冷泉節(1710頃)下)

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ことわざを知る辞典 の解説

喉元過ぎれば熱さを忘れる

苦しいことや辛いことも、過ぎてしまえば忘れることのたとえ。また、苦しい時に人から受けた恩もやがて忘れ、ありがたく思わなくなることのたとえ。

[使用例] 咽元通れば熱さ忘れると云う其通りで、艱難辛苦も過ぎて仕舞えば何ともない。貧乏は苦しいに違いないが、その貧乏が過ぎ去た後で昔の貧苦を思出して何が苦しいか、却て面白いくらいだから[福沢諭吉福翁自伝|1899]

[使用例] 人間の本性からいって喉元すぎれば何とやらで、そうなってから歳出を締め、財政の体質改善をやろうとしても、必ず強い反対が出てくるだろう。そのことを大平は十分に予期していて、自分が将来、どんな地位にいても財政再建だけは〈略〉やりとげたい、と漏らしていた[内橋克人幻想の「技術一流国」ニッポン|1982]

[解説] ひどく熱いものを口にすると、噛むことも飲み込むこともできなくなって、苦しい思いをします。しかし、いったん喉を通り過ぎてしまうと、まったくその熱さを感じなくなるものです。誰もが体感できる生理現象をたとえにして、説得力のある表現といえるでしょう。ただし、「熱さを忘れる」ことを自然なもの、やむをえないことと受け留めるか、忘れてはならないこととするかは、立場考え方によって異なり、社会的な文脈にもかかわってきます。多く体験に学ばない者や恩義を忘れる者を批判して使われますが、少数ながら、「福翁自伝」のように肯定的に使う例もあります。

中国〕好了傷疤、忘了疼(傷が治ると痛さを忘れる)

朝鮮개구리 올챙이 적 생각 못한다(蛙がおたまじゃくしの頃を思い出せない)

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