四月テーゼ(読み)しがつてーぜ(英語表記)Апрельские Тезисы/Aprel'skie Tezisï ロシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「四月テーゼ」の意味・わかりやすい解説

四月テーゼ
しがつてーぜ
Апрельские Тезисы/Aprel'skie Tezisï ロシア語
April Theses 英語

ロシア革命の指導者レーニンが1917年4月に発表した、ボリシェビキ党のとるべき革命戦略の要綱。亡命地スイスで同年、二月革命勃発(ぼっぱつ)の知らせを受けて帰国したレーニンは、帰国の直後10項目よりなる要綱を党の集会で読み上げ、それに注釈をつけて「現在の革命におけるプロレタリアート任務について」と題した文書を『プラウダ』紙に発表した。そのなかでレーニンは、臨時政府のもとでも戦争(第一次世界大戦)は依然として帝国主義戦争であること、当面する状況は革命の第一段階から第二段階への過渡であり、その特異点たる最大限の合法性を利用すべきこと、臨時政府をいっさい支持しないことを主張し、労働者代表ソビエトはただ一つ可能な革命政府の形態であると述べた。そして全権力をソビエトに移し、議会制共和国ではなく労農ソビエト共和国の樹立を目ざすべきことを提起し、社会民主党から共産党への党名変更、第三インターナショナルの創設に言及した。当時の党指導部は臨時政府条件付き支持に傾いていたので、当初このテーゼ党内からも激しい抵抗にあったが、4月の第7回党協議会で全党方針として採択され、これが、その年の十月革命を目ざす基本路線の指針となった。

[原 暉之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四月テーゼ」の意味・わかりやすい解説

四月テーゼ
しがつテーゼ
Aprel'skie Tezisy; April Theses

1917年4月 17日 (旧暦4日) ,亡命先のスイスから帰国したレーニンが「当面する革命におけるプロレタリアートの任務」と題して演説し,4月 20日 (旧暦7日) 『プラウダ』紙に発表した革命戦術。 10項目から成るそのおもな内容は,戦争について,ロシア革命の性質,臨時政府への態度,ソビエト共和国,土地の国有化,インターナショナルの復活などである。当時このテーゼはボルシェビキの内外を問わず激しい批判を浴びたが,まもなく激論の末,「すべての権力をソビエトに」のスローガンとともに党の「行動綱領」として採択された。このテーゼ中,特にロシアの現状を革命の第1段階 (ブルジョア民主主義革命) から第2段階 (プロレタリア社会主義革命) へ移行したと評価したこと,および新しいロシアの国家体制をソビエト共和国と想定したことはレーニンの独創的見解であり,二月革命以後明確な方針を失っていたボルシェビキに新しい指針を与えた。

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