四色問題(読み)ヨンショクモンダイ(英語表記)four colour problem

デジタル大辞泉 「四色問題」の意味・読み・例文・類語

よんしょく‐もんだい【四色問題】

いかなる地図でも境界線を接する国々は4色で塗り分けられることを証明せよ、という数学の証明問題。1976年米国のW=ハーケンとK=アッペル大型コンピューターで証明した。

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精選版 日本国語大辞典 「四色問題」の意味・読み・例文・類語

よんしょく‐もんだい【四色問題】

〘名〙 数学の証明問題の一つ。いかなる地図も境界線を接する国々は四色を用いて塗り分けられることを証明するというもの。一八四〇年メビウスによって提出され、一九七六年アメリカのW=ハーケンとK=アッペルが大型コンピュータを用いて証明した。

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改訂新版 世界大百科事典 「四色問題」の意味・わかりやすい解説

四色問題 (ししょくもんだい)
four colour problem

四色(よんしよく)問題ともいう。平面上または球面上に描かれた地図の国を色分けすることを考える。ここに,どの国も飛地をもたずつながっているものとし,また海も一つの国とみなすものとする。もちろん相隣る国には異なる色を使うが,2国の境が有限個の点である場合は同じ色を塗ってもよいとする。このようにするとき,〈平面上または球面上に描かれたどんな地図も4色だけで塗り分けできるであろう〉というのが四色問題である。3色以下では塗り分けられないような地図は容易に作れるし,実際にやってみると,国の数を多くしても,また国の配置を複雑にしても4色で足り,5色以上が必要となる地図がなかなか作れない。こういう経験的事実から上の予想が生まれたのである。A.F.メービウスは1840年にこの予想を数学化して証明するという問題を提出したといわれているが,有名になったのは79年にA.ケーリーがロンドン地理学協会でその困難さを指摘してからである。それ以来,四色問題は問題そのものが簡単でだれにでもわかりやすいところから多くの人びとの関心呼び,証明のための努力がなされた。そして90年にはヒーウッドP.J.Heawoodによって5色あれば色分け可能であることが示され,1937年にはフランクリンP.Franklinによって国の数が36以下であるときは4色で十分であることが示されたが,本質的な進展はみられず,永い間難問とされていた。しかしながら,76年になってこの難問も大型コンピューターの使用によりアッペルK.AppelとハーケンW.Hakenにより肯定的に解決された。彼らは地図の色分け問題は型の異なる1936個の標準的な地図の色分け問題に帰着できることを示し,コンピューターの使用により標準的な地図はいずれも4色で塗り分けられることを確かめたのである。このようにして,とにかく四色問題は解決されたのであるが,トーラス浮輪表面)上に描かれた地図については,7色で色分け可能で,それ以下では色分けできない地図の存在することが比較的容易に証明できる。
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四色問題 (よんしょくもんだい)

四色問題(ししょくもんだい)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四色問題」の意味・わかりやすい解説

四色問題
よんしょくもんだい
four-colour map problem

1850年代初めに提出された位相幾何学(→トポロジー)に関する問題。地図の隣り合った領域,すなわち共通の境界線をもつ領域が,同じ色にならないように塗り分けるには,最低何色の色が必要かという問題である。3色では足りないことは,実際に 3色では塗り分けられない 4個の領域からなる地図を描くことによって容易に示すことができる。地図の業者などの間では,古くから 4色で十分であることが経験的に知られていたようである。1879年イギリスの弁護士アルフレッド・ブレイ・ケンプが発表した論文の議論に基づいて,どのような地図も 5色で塗り分けることができることが示された。トーラス(輪環体。ドーナツの表面の曲面)上に描かれた地図については,最低 7色が必要であることが知られている。四色問題は,双対的に考えると,平面グラフの辺で結ばれた頂点が互いに異なった色になるように彩色する問題と同値であり,位相幾何学およびグラフ理論の立場から研究されてきた。1977年にケネス・I.アッペルとウォルフガング・ハーケン率いるイリノイ大学の数学者のグループによってこの問題は解決された。アッペルとハーケンらは 1936通りの地図のリストをつくり,4色で塗り分けられない地図があるとしてもこれらのいずれかの場合に帰着されることを示し,結果としてすべての地図は 4色で塗り分けられることを証明した。この証明ではコンピュータが本質的に用いられた。四色問題に対してコンピュータを用いない証明を与える試みは今日もなされている。

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百科事典マイペディア 「四色問題」の意味・わかりやすい解説

四色問題【ししょくもんだい】

平面または球面上のどんな地図も4色で塗り分けられるかどうかという問題。境を接する国は色を違えなければならないが,1点を共有するだけなら同じでもよい。1879年A.ケーリーが提出した古典的な位相数学の問題。現実には5色を要する図は知られず,また5色なら十分なこと,国数が36以下であるときは4色で十分なことが証明されていたが,一般的証明は1976年米国イリノイ大学のW.ハーケンとK.アッペルによって,コンピューターを使ってついに達成された。
→関連項目位相幾何学

四色問題【よんしょくもんだい】

四色(ししょく)問題

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世界大百科事典(旧版)内の四色問題の言及

【四色問題】より

…四色(よんしよく)問題ともいう。平面上または球面上に描かれた地図の国を色分けすることを考える。…

※「四色問題」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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