日本大百科全書(ニッポニカ) 「図画工作科教育」の意味・わかりやすい解説
図画工作科教育
ずがこうさくかきょういく
小学校の教科の一つ。おおむね、絵、彫刻、デザイン、工作および造形遊びを含む表現活動と鑑賞活動を指導する。2008年(平成20)に告示された新学習指導要領では、「表現及び鑑賞の活動を通して、感性を働かせながら、つくりだす喜びを味わうようにするとともに、造形的な創造活動の基礎的な能力を培い、豊かな情操を養う」との教科目標が掲げられている。
図画工作科の主眼はこの一文に明らかである。すなわち「美術の教育Education for Art」と「美術による教育Education through Art」の二つの文脈が含まれており、単に、みる(見る,観る、視る)・かく(書く、掻く、画く、描く)・つくる(作る、造る、創る)ことがゴールにはならないことを示唆している。学校で美術を指導することは、いうまでもなく人間形成の役割を担い、これこそが初等教育段階で欠かせない教科であるという根拠となっている。
図画工作との教科名は、歴史的には明治期の罫画(けいが)・画学にはじまり、図画、手工、工作、作業、造形等々、さまざまな名称でよばれてきた。この呼称の変遷は、美術そのものをどうとらえるか、美術教育の本質的役割をどこに求めるかなどの議論と無縁ではない。
明治期よりこれまで、図画工作教育の理念が連綿と継承されたことは特筆に値する。ただし図画工作という呼称は「鑑賞」を想起させにくいため、単に表現力を養う教科と誤解されやすいことも事実である。
新学習指導要領では、図画工作科の標準時間は「総合的な学習の時間」の導入の関係もあり、各学年50~70時間(週1~2時間)と、前回の各学年ほぼ70時間より減少した。個人の特性に応じて指導計画に弾力性をもたせるなどの工夫がいっそう必要とされている。
[若元澄男]
『教育技術研究所編『図説小学校図画工作科授業の事典』(1982・小学館)』▽『若元澄男編『図画工作・美術科――重要用語300の基礎知識』(2000・明治図書出版)』▽『佐々有生編著『図画工作・美術科教育の理論と実践』第4版(2007・教育情報出版)』