精選版 日本国語大辞典 「教科」の意味・読み・例文・類語
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
学校で児童・生徒に教授すべき教育内容のまとまり、単位をいう。英語ではsubject。現在の日本では、国語、社会、算数(数学)、理科、音楽、図画工作(美術)、家庭、体育、外国語などの「教科」がある。高等学校では、その教科をさらに細分化した単位、たとえば理科における物理、化学、生物、地学などを「科目」とよんでいる。
教科は、科学、技術、芸術などの人類の文化遺産を、教育的観点から、学年発達を考慮して、教育内容として体系的に編成したものであるという定義もされる。しかし教科の区分や編成は、それぞれの国の学校の歴史や政治的、社会的条件を反映しており、かならずしも論理的に構成されているわけではない。
[伊東亮三]
一般に、教科の起源はギリシアの自由七科(七自由科)、つまり文法、修辞学、弁証法の「三学」と、算術、音楽、幾何、天文の「四科」に求められるが、この自由七科の基礎には、読み・書き・算(スリー・アールズ3R's)があり、また体育も重要な教科と考えられた。この自由七科を基軸とする教育は、古代ローマ、中世を経て、ルネサンス期に、ギリシア語・ラテン語を基本教科とする言語・古典中心の教育に変わり、その伝統は、西欧では20世紀まで続いた。
その後17、18世紀になり、自然科学の発達と「すべての人にすべてのことを教授する」という汎知(はんち)主義や百科全書主義の思想が現れ、自由七科、言語的教科のほかに、地理、博物、物理などが教科の列に加えられてきた。
現代的な意味での教科は、19世紀以降の国民教育制度の発展のなかで成立する。産業革命、国民国家の成立、近代諸科学の発展に伴い、支配階層だけでなく庶民階層を含むすべての国民の子弟を対象とする学校において、国語、算術、理科、歴史が主要な教科となり、さらに公民、美術、音楽、技術なども取り入れられ、整備されてきた。
[伊東亮三]
大宝律令(たいほうりつりょう)によって設立された大学、国学が、中国の六芸(りくげい)(礼、楽、射、御、書、数)を範とする教科区分を採用したといわれるが、近世に入り、儒教を中心とした漢学が支配階級の主要教科であった。他方、江戸中期以降、庶民を対象とする寺子屋が繁栄し、そこでは読み・書き・そろばんが教えられた。
明治以降の日本の近代学校制度は、近代化の進んだ欧米のそれを模範として発展した。欧米に倣った教育課程は、とくに数学、自然科学の教科において、日本の科学、技術や産業発達に貢献したが、国語、歴史など文科系教科において、修身科が中核となって国家主義的臣民教育に奉仕した。第二次世界大戦後の新教育課程においては、修身、歴史、地理、公民などを統合した社会科が中核教科となり、児童・生徒の生活経験を重視する形で、各教科の内容が構成された。
[伊東亮三]
教科は、小学校では、低学年において社会科と理科が生活科に統合されているように、児童の認識が未発達なため、国語、社会、理科などが合科の形で指導される場合がある。このように、小学校の低学年では教科自体の内容が未分化であるが、高学年からさらに中学校、高等学校へと進むにしたがって教科の内容が分化・専門化していくのが一般的である。その分化した内容のまとまりを、中学校では「分野」とよび、高等学校では、前述のように「科目」という。
また教科は、分類のうえで、他の諸教科の学習の道具となる言語や数量を扱う「用具教科」(道具教科)、内容そのものの習得を直接に目的とする社会・理科などの「内容教科」、音楽・図画工作などの「表現教科」の3グループに分けられることもある。しかし、それはかならずしも教科全体を構造的にとらえているわけでもない。国語は、言語教育と文学教育の両面をもっており、用具教科にも表現教科にも入ることになる。また国語や算術・数学を用具教科とよぶことを嫌う人もいる。体育がこれらの3グループに入りきらないという不都合もある。
[伊東亮三]
『木原健太郎編著『現代教科教育学大系1 教科教育の理論』(1974・第一法規出版)』▽『柴田義松著『教育学大全集31 教科教育論』(1981・第一法規出版)』▽『生江義男ほか編『教科教育百年史』(1985・建帛社)』▽『信州大学教科教育研究会著『教科教育学の構想――学習指導を深めるために』上下(1986・明治図書出版)』▽『『現代教科教育シリーズ』全12巻(1987~89・東信堂)』▽『北海道教育大学教科教育学研究図書編集委員会編『教科教育学の創造――創る視点と探る視点』(1992・東京書籍)』▽『真野宮雄・蛯谷米司・高萩保治編『21世紀に求められる教科教育の在り方』(1995・東洋館出版社)』▽『日本教科教育学会編『新しい教育課程の創造――教科学習と総合的学習の構造化』(2001・教育出版)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…主として学校教育についていわれるが,学校外の生涯学習でも,たとえば公民館の講座で主題を設定し,数回の講義・話合いなどについてたてられた計画の全体は,教育課程といえる。第2次大戦前は学科課程または教科課程といい,教科指導の計画のみを指すことが多かった。戦後数年間はアメリカの教育の影響を受け,〈カリキュラム〉の語がそのまま使用された。…
※「教科」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。激甚災害法(1962年成立)に基づいて政令で指定される。全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準に...
9/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新