②は明治期に入ってから、西周が、その訳書、「奚般氏心理学‐下」(一八七九)において sentiment, feeling, Gefühl の訳語として用いた。その後、哲学、心理学、教育学の専門辞書に収録されるようになり、明治二〇年代以降 sentiment の訳語として確定した。同時に意味も哲学、心理学の術語から知的、道徳的、美的、宗教的な概念へと広がった。
感情の一種であるが、二つの意味で用いられることが多い。
(1)道徳、宗教、芸術、学問など社会的価値をもった感情の複合という意味でとらえられる場合。絵画や音楽を鑑賞するとき、情動のようなはっきりしたものではなく、なんとなく心が洗われるとか、身が引き締まるとかいう感じになることがある。このような漠然とした、いくつかの感情が複合したような状態をいう。この情操を身に備えた人間は、社会的価値のうえで高く評価される。一般にいわれている情操教育の情操というのは、この意味で用いられていることが多い。
(2)情動の基礎的状態という意味でとらえられる場合。情操は、ある物事について生起するいろいろな情動の統一的な原因になるものという考え方である。それは一時的なものではなく、持続的な一定の傾向といえる。教師がある生徒に対してどのような情操を抱いているかによって、その教師の生徒に対する情動のおこし方が決まってくる。愛の情操をもっている場合には、たとえ一時的に怒りの情動を発することがあったとしても、多くの場面では親愛的情動を示すであろう。
[花沢成一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…昔から,知の教育,情の教育,意の教育という分け方があるが,情操教育はひろく情の教育にあたるものである。そして,これは知の教育と意の教育とも密接なつながりをもつとともに,知性と意志をつなぐはたらきもする。…
※「情操」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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