日本大百科全書(ニッポニカ) 「固体撮像素子」の意味・わかりやすい解説
固体撮像素子
こたいさつぞうそし
solid state image sensor
集積回路(IC:integrated circuits)を用いたイメージセンサー(光入力を電気信号に変換する装置)。イメージャーあるいは撮像板ともよばれる。アナログ方式における、フィルムカメラのフィルムや放送用テレビジョンカメラの撮像管の役割をするデジタル素子。光電変換と転送の二つの機能をもつ。光電変換はレンズでとらえた被写体からの光を受けて明るさの強弱を電荷量の大小に変える機能、転送は電荷量の大小を順次読み出して電気信号として送り出す機能である。送り出された信号は、カメラならば、モニターに画像を表示するとともに、メモリーカードやハードディスクに記録され、放送用テレビジョンカメラならば、放送電波として送信され、また業務用記録媒体に記録される。
光電変換には多数のホトダイオードを平面状のシリコン基板に並べたものが使われ、転送には電荷結合素子(CCD:charge-coupled device)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS(シーモス):complementary metal oxide semiconductor)などの集積回路が使われる。
CCDを使ったものはCCDイメージセンサー(CCD image sensor)とよばれる。CCDは集積回路を構成する個々の素片(そへん)間を導線で連結するかわりに表面の電荷によって直接連結する構造の素子である。CCDイメージセンサーの長所として、感度が高い、転送速度が速い、ノイズが少ない、などがあげられる。短所としては、高いプラスマイナスの電圧を含む多種類の入力電圧が必要で電源回路が複雑になる、製造に高度の技術が必要でかつ設備が限られることから製造コストが高くなる、などがあげられる。
CMOSを使ったものはCMOSイメージセンサー(CMOS image sensor)とよばれる。CMOSは、代表的な半導体素子の一つである金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide-semiconductor field effect transistor)の発展型で、一つの基板にp形MOSFETとn形MOSFETを搭載し、p形とn形が互いに補い合うように動作することから相補型と名づけられたものである。CMOSイメージセンサーの長所として、小型化が可能、低電圧で動作する、電源回路が簡単である、低消費電力、汎用(はんよう)のMOS製造設備が使えるため製造コストが低くなる、などがあげられる。短所としては、照度が低いとき動作が不安定になりやすくノイズが増える、高速で動く被写体を撮影したとき像がひずむことがある、などがあげられる。
画像読み取りの走査方式の分類に、リニアイメージセンサーとエリアイメージセンサーの2種類がある。リニアイメージセンサーは一次元イメージセンサーまたはラインイメージセンサーともよばれ、撮像素子の素片を1列に配列したものである。構造は簡単であるが、面状の被写体を走査するには、撮像素片を並べた方向と直角の方向にセンサー列を動かす必要がある。動画の撮影には向かず、おもにファクシミリや複写機などに使われる。エリアイメージセンサーは二次元イメージセンサーともよばれ、撮像素子の素片を二次元の面状に配置したもので、一度に画面全体を走査することができる。静止画、動画などの画像撮影に適し、デジタルカメラ、ビデオカメラ、放送用テレビジョンカメラなどに使われる。
初期の固体撮像素子では、CCDイメージセンサーがもっぱら使われたが、CMOSイメージセンサーの改良が進んで短所が克服された結果、現在カメラの分野では、安価な入門カメラから高級一眼カメラまで、大部分がCMOSイメージセンサーになっている。
[吉川昭吉郎]