日本大百科全書(ニッポニカ) 「光電変換材料」の意味・わかりやすい解説
光電変換材料
こうでんへんかんざいりょう
photoelectric conversion material
光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料。その原理は、光電効果に基づくものが大部分である。光吸収に基づき、固体表面などから光電子が放出される現象を外部光電効果といい、固体内部などの伝導電子数が増加する現象を内部光電効果という。外部光電効果の受光素子への応用例として、光電管と光電子増倍管がある。これらの受光面(光電面)には、セシウムなどのアルカリ金属を含む合金が用いられる。内部光電効果は、光起電力効果と光伝導効果に分類される。光電子が光起電力を生じる例として、ホトダイオードがあり、太陽電池はこの原理を応用したものである。太陽電池を作成する際に用いる材料で分類すると、以下のようになる。
(1)ケイ素(Si)系 単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコン(アモルファスシリコン)などが用いられる。
(2)化合物半導体系 CdTe(テルル化カドミウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、CuInGaSe(銅Cu・インジウムIn・ガリウムGa・セレンSeの化合物)などが用いられる。
(3)有機系 いわゆる機能性色素を活用するタイプで、有機半導体太陽電池と色素増感太陽電池がある。前者では、メロシアニン系、スクワリリウム系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系の色素などが用いられる。後者は光→化学エネルギー→電気エネルギーへの変換とみなせる。多孔質酸化チタンの受光面をルテニウムピリジン錯体系色素で増感して利用するとよい効率を与えたことから研究が盛んになった。ルテニウムを用いない色素の開発も進められている。
MOS(metal oxide semiconductor:金属酸化膜半導体)構造をもつような素子を組み合わせた光学素子を二次元平面に細かく並べた撮像素子として、CCD(charge coupled device:電荷結合素子)およびCMOS(complementary MOS:相補型金属酸化膜半導体)がある。デジタルビデオカメラの心臓部として、従来のビジコンやサチコン(電子管方式の撮像管)にとってかわった。デジタルカメラの撮像素子としても使われ、小型、軽量、堅牢(けんろう)であることから、携帯電話などにも組み込まれて便利に使われている。起電力を生ずる材料は無機系の半導体であるが、RGB(赤・緑・青)のカラーフィルターとして、有機系の色素が用いられている。
CdS(硫化カドミウム)は、光照射により伝導体の自由電子が動きやすくなるn形半導体で、電子が電荷のキャリアとなって電気抵抗値が低下する光伝導を示す。可視光に応答する性質があるため、露出計や照度計として広く用いられた。セレンはp形半導体(正孔=ホールによって伝導がおこる半導体)で、光伝導におけるキャリアは、価電子帯のホールである。電子写真(電子複写、普通紙コピー、ゼログラフィーまたは電子印刷ともいう)における感光体として主流であったが、毒性が確認されたために、現在はOPC(organic photoconductor:有機光伝導体)に置き換わった。OPCとしては種々の機能性色素が用いられている。代表例として、チタニルフタロシアニン(フタロシアニンの水素をTi=Oで置換したもの)がある。
[時田澄男]
『杉森彰・時田澄男著「光電効果とその応用」(『光化学――光反応から光機能性まで』所収・2012・裳華房)』