国家間の平和的友好的な関係の崩壊を指す一般的な概念。国際法上の用語としては〈外交関係の断絶〉(ないしは外交断絶)が通常用いられる。国交断絶は外交関係の断絶と同義に用いられることがあるが,経済,文化,社会等国家間の関係が全面的に断絶する場合を指す広い概念として用いられることもある。また国家承認と国交断絶とは直接関係なく,国交断絶があっても国家としての承認関係は影響を受けない(承認)。外交関係は,国家間の合意に基づいて設定される法的な関係であり,外交関係の断絶は,一方または双方が断絶の意思をなんらかの形で表示することにより生ずる。そのような意思表示の方法としては,相手国に断絶の意思を通報し,外交使節団を引き揚げるという形をとるのが普通である。過去においては,国際紛争が悪化し,外交関係の断絶に至り,ついには戦争になるといったケースが多かったが,外交関係の断絶はそれだけでは戦争状態を意味しない。他方,戦争になれば当然外交関係は断絶されることになる。外交関係の断絶の例としては,例えば,1917年のアメリカによる対ドイツ断交がある。第1次大戦中,ドイツが潜水艦による無差別攻撃作戦を展開するとの態度をとったのに対し,アメリカはドイツがこのような作戦を放棄しなければ,外交関係を断絶する旨の通告を行ったが,ドイツ側がこれに応じなかったため最終的に外交関係の断絶を通告し,続いてアメリカは第1次大戦に参戦した。また最近では,61年にアメリカがキューバとの外交関係を断絶した例がある。いわゆるキューバ危機として知られているアメリカ海軍によるキューバ封鎖が行われたのはその翌年である。このほか,国際連合が加盟国に対して外交関係の断絶を呼びかけたこともある。南アフリカ共和国の人種差別(アパルトヘイト)政策に反対する62年の国連総会の決議において,総会は,各加盟国が南アフリカに対して外交関係の断絶を含む種々の措置をとるよう要請した。
執筆者:野村 一成
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国家間の平和的な友好関係を断絶すること。国交断絶に至るおそれのある紛争の処理を規定した国際連盟規約第12条に由来するが、通常は、国家間の外交関係を断絶する外交(関係)断絶と同義に用いられる。すなわち、特定の国家との関係において重大な意見の不一致があったり、相手国の行動が極度に自国の威信を害するなど、平時に特定国に対して非友好的な態度を表明する必要がある場合、あるいは、武力衝突または戦争に先だってとられる措置である。これを具体的に示すために、自国が派遣した外交使節およびその随員を召還するとともに、自国に駐在する相手国の外交使節および随員に退去を命じて、本国に引き揚げさせるのである。たとえば、1980年4月アメリカは、イランでの米大使館人質事件に対する報復として外交関係を断絶した。
しかし、国交断絶を全面的な国交(政府レベルでの国家間の交渉)の断絶を意味するとすれば、外交関係と同義ではない。外交断絶自体は領事関係の断絶をもたらすものではなく、国交断絶はこれら両者を含むものと考えられるからである。もっとも実際上は、国交断絶と外交断絶は同じ措置がとられるのであって、区別する実益はない。なお、断絶があっても、当該関係国間の国際法上の関係には原則として影響せず、国家承認の取消しや撤回を意味するものではなく、条約の終了をもたらすものでもない。国家間の交渉は第三国の外交機関を通してもたれるのが普通であり、また、接受国は使節団の公館・文書を尊重し保護しなければならない。しかし、政治的行為としては大きな意味をもち、国連憲章においても、集団安全保障における非軍事的強制措置の一つとして外交断絶を規定している(41条)。
[広部和也]
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