1億円以上の株式などの有価証券をもつ資産家が海外へ転出する際に、資産の含み益に所得税・復興特別所得税を課す制度。2015年度(平成27)税制改正に盛り込まれ、2015年7月以後に海外へ転出した者から適用を始めた。仮に株式などを売却していなくても、海外に出た時点で売却したとみなし課税する。海外に住む親族へ資産を遺贈したり、贈与したりした場合にも対象となる。株式売却益などに税金がかからない租税回避地(タックス・ヘイブン)へ資産家が移住して課税を逃れるという行為を防ぐねらいがある。
転出直前の10年以内に5年を超えて日本に住んでいた人で、海外への移住者だけでなく、1年を超える海外転勤や留学などで国内に住所や居所がない人も該当する。就業査証(ビザ)を得て日本で働く外国人は同制度の対象外である。課税対象となる資産は、株式、投資信託などの有価証券のほか、未決済の信用取引やデリバティブ取引などが該当し、この含み益に対し15.315%の所得税・復興特別所得税を課す。国外転出時課税制度に基づく納税をしないで出国すると、加算税などを含む追徴課税の対象となる。なお納税猶予を受けると、一定の要件のもとで納税が5年間猶予される。また5年以内に帰国し、当該有価証券を保有していた場合は課税が取り消される。
富裕層の海外移住による課税逃れについては、経済協力開発機構(OECD)が2014年に報告書で懸念を表明し、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダなど日本を除く主要7か国(G7)はいずれも国外転出時課税制度を導入済みであった。日本の国税庁も課税逃れを防止するため、2013年から、毎年12月31日時点で国外に5000万円超の財産がある人に申告制度を導入するなど海外財産の把握に力を入れており、国外転出時課税制度の導入はこの一環である。
[矢野 武 2019年6月18日]
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