日本大百科全書(ニッポニカ) 「国家計量標準」の意味・わかりやすい解説
国家計量標準
こっかけいりょうひょうじゅん
national measurement standard
国家または経済圏で用いるように国家当局が承認した測定標準。国家測定標準、国家標準ともいう。当該の量の種類について、他の測定標準に量の値を付与するための根拠となる。
日本においては、計量法に基づいて長さ、質量、温度などの基本量、および体積、力、圧力などの組立量、および一部の工業量の国家計量標準が計量行政審議会計量標準部会の審議を経て決定されている。そして、計量器の校正をする事業所のマネジメント能力ならびに技術能力を審査し、その資格を認定する仕組みが計量法に基づく認定事業者制度(JCSS:Japan Calibration Service System)である。
その国家計量標準は、産業技術総合研究所が構築し、製品評価技術基盤機構がJCSS制度を運営している。また、日本適合性認定協会などが試験所等の認定業務を実施している。
JCSSが扱う事業の区分は、長さ(端度器、レーザー、標準尺、直尺、鋼製巻尺、測長器および測微器)、体積、質量(分銅およびおもり)、力(力計、一軸試験機)、トルク、圧力、粘度、時間、流量・流速、電気等(直流電圧、直流抵抗、直流電流、交流電圧、交流電流、電力、電力量、高周波電圧、高周波電力、レーザーパワー)、熱量、熱伝導率、温度(抵抗温度計、放射温度計、ガラス製温度計)、光(光度、光束、輝度、照度、分光放射照度、分布温度)、音響・超音波、振動加速度、放射線・放射能(照射線量、照射線量率、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、線量当量、線量当量率)、硬さ、衝撃値、湿度(露点計、電子式湿度計)、濃度(標準ガス、零位調整標準ガス、pH標準液、pH標準液以外の標準液)、角度、密度・屈折率の23種類(ただし、電気は直流・低周波と高周波に二分される)が示されている。
これらの国家計量標準(特定標準器、特定標準物質)を頂点とする計量計測トレーサビリティの階層ごとに校正が実施されて、測定不確かさの記述を伴った校正証明書が発行されることになる。そして、この証明書を活用することにより、国際相互承認に加盟する国や経済圏との相互承認の実施が可能となる。
[今井秀孝]