認証標準物質(読み)にんしょうひょうじゅんぶっしつ(英語表記)certified reference material

日本大百科全書(ニッポニカ) 「認証標準物質」の意味・わかりやすい解説

認証標準物質
にんしょうひょうじゅんぶっしつ
certified reference material

有効な手順を用いて一つ以上の指定された特性の値および付随する不確かさならびに計量計測トレーサビリティを与える、権威ある機関から発行された文書が添えられた標準物質。略称CRM

 計量計測のトレーサビリティ階層において、最上位に位置づけられる国際計量標準国家計量標準が物理学の定義や約束によって実現できる場合には、いわゆる国際単位系SI)にトレーサブルであるということができる。しかし、化学生物医学・食品などの分野では、明確な定義に準拠させることはかならずしも容易ではなく、SIにトレーサブルという筋道を確保することがむずかしい。しかしながら、最上位の位置づけを、明確な定義のもとに高度の信頼度を有する参照手順、あるいは安定性・均質性の確保された標準物質に求めることが可能である。そこで、化学標準、臨床医学、環境分析などの世界では、認証標準物質を計量計測トレーサビリティの最上位に置く概念が受け入れられている。

 ここでいう証明書は証明プロセスを記述したプロトコルに言及しなければならず、「標準物質証明書」の定義はISO Guide 30 : 1992(JIS Q 0030)「標準物質に関連して用いられる用語及び定義」に示されている。また、認証標準物質の生産および認証のための手順はISO Guide 34(JIS Q 0034)「標準物質生産者の能力に関する一般要求事項」及びISO Guide35(JIS Q 0035)「標準物質-認証のための一般的及び統計的な原則」に示されている。

 認証標準物質は一般にはバッチ(一括される類似試料)で作製される。任意のバッチに対し、量の値および測定の不確かさは、そのバッチを代表するサンプルに対する測定によって得られる。認証標準物質としては、次の例がある。

(1)三重点セル内の三重点が既知の物質
(2)透過フィルタホルダ内の光学密度が既知のガラス
(3)顕微鏡スライド上に乗せる粒径が均一な球
(4)ジョセフソン接合のアレイ
 一方、一般の標準物質(reference material:RM)については、「指定された性質に関して十分に均質、かつ、安定であり、測定又は名義的性質の検査において、意図する用途に適していることが立証されている物質」として定義されており、とくに認証証明書を求めない場合や日常の管理用に広く活用されている。

[今井秀孝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例