国産方,産物方,産物会所ともいう。江戸中期以降,藩が領内で生産される国産の奨励または統制を行うために設けた機関。藩によっては統制の対象とした商品名をつけて木綿会所,砂糖会所などと呼んでいるところもある。多くの藩は早くから財政窮乏に苦しみ,その打開に苦慮していたが,幕府の享保改革による殖産興業政策の実施もあって,諸藩でも領内における特定産物の生産に注目し,これを積極的に奨励するようになった。また,これの一手販売による利益の獲得を目ざすようになった。この結果,国産会所が各藩で設置されるようになったのである。例として東は弘前,盛岡,仙台,棚倉,中村,秋田,米沢,会津藩をはじめとして,西は福岡,小倉,秋月,佐賀,熊本,薩摩藩に至るまで,多くの会所をあげることができる。会所では城下有力商人が頭取や取締役に任命され,資金の貸与,技術の導入と指導,品質の管理などを通して特定産物の生産を奨励し,また,これを会所を通して集荷しては江戸・大坂の市場へ移出した。なかには江戸・大坂に販売を目的とした出先の会所を設けている例も多い。幕末になると農村への商人の進出がめざましく,これら商人を中心に会所が農村に設置され,統制にあたっている例もある。会所で奨励または統制の対象になった産物は,コウゾ,紙,ハゼ(櫨),ハゼ蠟,漆,漆蠟,鉄,綿,木綿,藍玉(あいだま),生糸,蚕種,織物,塩,砂糖,石炭など多種多様であった。集荷にあたっては藩札が利用されているところが多い。会所は深刻な財政難から産物の独占をめざす例が多く,そのため会所が百姓一揆の攻撃目標になった例がある。なお,幕府自身も会所を設けてニンジンやミョウバンなどを統制していたが,幕末になると国産会所の設置を計画し,1855年(安政2)国益主法掛が置かれ,翌年,国益会所が設置され,57年には箱館会所が設置されている。
→藩専売制
執筆者:吉永 昭
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国産方、産物方、産物会所、物産会所ともいう。江戸中期以降、諸藩が領内で生産される国産の奨励または統制を行うために設けた役所。藩によっては統制の対象となった商品名をつけて木綿(もめん)会所、砂糖会所などとよんでいるところもある。早くから財政窮乏に苦しんでいた多くの藩では、幕府の享保(きょうほう)の改革による殖産興業政策の実施もあって、財源として領内における特定産物に注目し、これを積極的に奨励するようになった。また、これの一手販売による利益の獲得を目ざすようになり、国産会所が各藩で設置されることになったのである。会所では城下有力商人が頭取(とうどり)や取締役に任命され、資金の調達と生産者への貸与、技術の導入と指導、品質の管理などを通して特定の産物を奨励し、また、これを会所を通して集荷しては江戸、大坂の市場へ移出した。なかには江戸、大坂に販売を目的とした出先の会所を設けている例も多い。幕末になると、農村の商人の進出も目覚ましく、これら商人を中心に領内各地に会所が設けられたところもある。会所で奨励または統制の対象となった産物は、楮(こうぞ)、紙、櫨(はぜ)、櫨蝋(はぜろう)、漆(うるし)、漆蝋、鉄、綿、木綿(もめん)、生糸(きいと)、蚕種(さんしゅ)、織物、塩、砂糖など多種多様であった。集荷にあたっては藩札(はんさつ)が用いられている例が多い。会所は、深刻な財政難もあって産物の独占を目ざす場合が多く、このため百姓一揆(いっき)の攻撃目標になった会所もある。なお、幕府も会所を設けて人参(にんじん)、みょうばんなどを統制していたが、幕末には国益会所や箱館(はこだて)産物会所を設けて産業統制を強化した。
[吉永 昭]
国産方・産物方・物産会所・産物会所などとも。江戸時代,幕府や諸藩が殖産興業政策または国産専売の実施を目的に設置した役所。統制の対象となる商品名をつけて木綿会所・紙方会所・砂糖会所などとよぶこともある。諸藩の場合,江戸初期からみられるが,とくに中期以降,藩財政の窮乏や商品生産の発達などにより多くの藩で設置された。幕府の場合も早くから長崎貿易を統制するために設けられ,享保期には各種の座や会所が設置された。さらに幕末,蝦夷地(えぞち)の産物や国産を統制するため設けられた。会所には御用達商人が役人として参加している例が多い。
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[後期――特産物の専売化と荷為替の運用]
ここで時期区分した年代は,19世紀前半期にあたり,文化・文政・天保期(1804‐44)ということになろう。藩政改革の視点からこの時代を特徴づけるものは,各藩ともに財政的に行き詰まり,産物会所(国産会所)を設け,藩専売制によってこの困難な事態を打開しようとしていることである。例えば,播磨・但馬両国内に展開している大小諸藩をみても,こぞってこの時期に国産会所の設立に走っているが,ただ,産物会所を設け,専売制の実施に踏み切っても赤穂藩の塩専売制度のように,逆に1821年(文政4)には産物会所の解散に追い込まれていく場合もみられた。…
…他方,販売にあたっては,領内で生産された商品や他領から仕入れた商品を独占し,これを領内で一手に販売する領内配給独占と,商品を領外の大坂,江戸市場に送る領外移出独占とがあった。この場合,専売機関として産物方や国産会所といった役所や,専売の商品名をつけた紙会所や蠟会所などが設置され,また,間接的購買独占の場合には,有力商人が会所の頭取に任命されている例が多い。なお当時は財政窮乏のため各藩で藩札が発行され,なかには藩札で領内から商品を購入し,これを大坂,江戸へ送って正貨を獲得する方法がとられていた。…
※「国産会所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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