国立大学法人法に基づいて設置された、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構傘下の国立の研究所。英語名はNational Institute of Informatics。略称は情報研、NII。所在地は東京都千代田区一ツ橋の学術総合センタービル。
インターネットの急速な普及などIT(情報技術)時代を迎え学術情報の重要性が飛躍的に増大したため、学術情報センター(略称、NACSIS(ナクシス))を発展させた研究機関として、2000年(平成12)4月に設置された。情報学という新しい学問分野を担う研究所として、ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなどの関連分野の理論・方法論から応用まで幅広く研究する。2004年に法人化され、情報・システム機構の一構成研究機関として改組された。
同研究所は、情報学を深める研究機関としての役割と、学術情報サービスプロバイダー(GeNii(ジーニイ)など)と学術情報ネットワーク(SINET(サイネット)/Super SINET)の運営者としての役割を担っている。また総合研究大学院大学に参加して、複合科学研究科情報学専攻として博士課程の学生の教育指導も行っている。
SINET事業では、2016年4月からSINET5へ移行した。全国の約850大学・研究機関などを100Gbpsの高速回線でつないでいるほか、日米なども高速回線で結んでいる。世界的にみてもパワフルなネットワークを構築している。
学術情報サービスでは、目録所在情報サービス、情報検索サービス、電子図書館サービスなどを提供。これらを発展させたのがGeNii(NII学術コンテンツ・ポータル)であり、全国の大学や研究機関を結び、総合検索窓口や論文情報や図書情報など、サービスの提供を行っている。GeNiiを構成する一つのコンポーネントとしてCiNii(サイニイ)がある。これは日本を代表する論文検索で、科学技術振興機構、国立国会図書館が作成したデータなども取り込んで1970万件以上の論文にアクセスできるようになっている。
図書文献情報は、日本十進分類法(NDC:Nippon Decimal Classification)や国際標準逐次刊行物番号(ISSN:International Standard Serial Number)などで文献分類を行うことができるが、インターネット上の文書や特許文献などの文献分類は標準化がされていなかった。その解決のため、国立機関として情報検索分野の標準化の役割を担ってきた。
研究分野では、人工知能(AI)、ロボティクスなど情報学に未来像を探る「情報学プリンシプル研究系」、コンピュータやネットワークの高性能化を目ざす「アーキテクチャ科学研究系」、記号メディアなどのコンテンツやメディアに関する分析を行う「コンテンツ科学研究系」、情報世界と実社会を橋渡しする「情報社会相関研究系」の四つがある。このほか社会の重要課題に迅速に対応するため、研究系の壁を取り払った「クラウド基盤研究開発センター」「オープンサイエンス基盤研究センター」など13センターを設置している。2011年から2016年にかけて、当研究所が中心となってAIを駆使して大学入試に挑戦した「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」プロジェクトなどが話題を集めた。
[馬場錬成・玉村 治 2018年7月20日]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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