企業会計において定められている基準。日本では、1949年(昭和24)7月に経済安定本部企業会計制度対策調査会が、企業会計に関する原則をまとめて中間報告の形で公表したものをさす。なぜ中間報告かといえば、企業会計原則はこれにより確定し、将来にわたって固定的なものとされるのではなく、今後の社会、経済的な進展とともに変化するものであることが意味されている。
その前文「企業会計原則の設定について」で、まず目的について、以下のように述べている。日本の企業会計制度は、欧米のそれに比較して改善の余地が多く、かつ、甚だしく不統一であるため、企業の財政状態や経営成績を正確に把握することが困難な実情にある。また、日本の経済再建上の当面の課題である外資の導入、企業の合理化、課税の公正化、証券投資の民主化、産業金融の適正化等の合理的解決のためにも、企業会計制度の改善統一は緊急を要する問題である。よって企業会計の基準を確立し、維持するため、まず企業会計原則を設定して、日本の国民経済の民主的に健全な発達のための科学的基礎を与えようとするものである。
次に、企業会計原則の性格について、以下のように述べている。企業会計原則は、企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、かならずしも法令によって強制されないまでも、すべての企業がその会計を処理するにあたって従わなければならない基準である。また、企業会計原則は、公認会計士が、公認会計士法および証券取引法に基づき財務諸表の監査をなす場合において従わなければならない基準となる。さらに、企業会計原則は、将来において、商法、税法、物価統制令等の企業会計に関係のある諸法令が制度改廃される場合において尊重されなければならないものである。
その後、企業会計原則は幾度かの改正が行われたが、最終改正は1982年である。また、企業会計原則の解釈に関する一連の規定である企業会計原則注解が1954年に公表され、特定の項目に対する補足的説明や具体的な内容を示す役割を果たしている。
現行の企業会計原則は、3部構成からなる。第一では企業会計に関する一般原則が示されている。具体的には、真実性の原則、正規の簿記の原則、資本取引・損益取引区別の原則、明瞭(めいりょう)性の原則、継続性の原則、保守主義の原則、単一性の原則の七つである。なお、企業会計原則注解の注1では、重要性の原則が示されている。真実性の原則は、「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」とされ、それ以外の一般原則ならびに以下で述べる損益計算書原則および貸借対照表原則を守ることにより達成される最高規範とされている。
第二では損益計算書にかかわる原則が示されている。具体的には、損益計算に関する会計処理の原則である発生主義、実現主義、損益計算書の作成表示に関する原則である区分計算、総額主義、会計処理の原則および作成表示に関する原則にかかわる費用収益対応の原則などが示されている。とくに、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算書に計上してはならない。」と述べているが、これは今日の企業会計の目的が適正な利益計算にあり、かつそこで計算される利益が実現利益であることを表明したものである。
第三では貸借対照表にかかわる原則が示されている。具体的には、区分表示、完全性(網羅性)、総額主義などの原則が示されている。貸借対照表には、企業に属するすべての資産、負債および資本が記載され、それにより企業の財政状態が明らかにされる。注意が必要なことは、ここでいう財政状態の意味である。貸借対照表に計上される資産、負債および資本ならびにそれらに付される金額は、主として前記した利益計算の結果として導かれたものである点である。したがって、貸借対照表が示す財政状態とは、どこからいくらの資金が調達され(負債および資本)、それがなににいくら使われているか(資産)、すなわち資金の調達源泉とその運用形態のことを意味している。いずれにせよ、企業会計原則を貫く基本的な理念は、企業会計の目的を適正な期間損益計算においていることにある。
[万代勝信]
『松井泰則著『企業会計原則の解説 新会計基準・新商法対応』5訂版(2005・一橋出版)』▽『小林秀行著『詳解 企業会計基準――設例で学ぶ企業会計原則と個別会計基準のすべて 会社法対応』(2007・ダイヤモンド社)』▽『石原裕也著『企業会計原則の論理』(2008・白桃書房)』
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…アメリカでは,州法としての会社法のほかに,連邦法としての証券関係法令にもとづく証券取引委員会(SEC)の規定に支えられて,会計士協会が定める会計原則が制度的に受け入れられていたが,近年,会計原則を審議決定する機能は,新設された財務会計基準委員会Financial Accounting Standards Board(FASB)にゆだねられている。日本では,大蔵大臣に対する諮問機関である企業会計審議会が答申する企業会計原則その他の意見書が会計原則としての取扱いをうけているが,商法における会社の計算の諸規定および商法総則の会計帳簿に関する諸規定との関係は不明確で,問題を残している。国際会計基準【中島 省吾】。…
…企業の経営活動を貨幣価値によって記録計算し,一定期間の企業努力とその成果(経営成績),期間末で企業が所有する資産,負っている負債および企業の資本の在高(財政状態)などを明らかにするための報告書をいう。
[種類]
大蔵大臣の諮問機関である企業会計審議会によって,一般に公正妥当なものとして認められる会計原則(企業会計原則)が公表されているが,それによれば,財務諸表には,(1)損益計算書,(2)貸借対照表,(3)財務諸表付属明細表,(4)利益処分計算書が含まれている。損益計算書は経営成績,貸借対照表は財政状態,財務諸表付属明細表は損益計算書および貸借対照表における重要な項目の内訳明細あるいは変化の状態,利益処分計算書は株主総会の決議によって当該期間の利益の処分の結果を表示するものである。…
※「企業会計原則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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