改訂新版 世界大百科事典 「国際行政法」の意味・わかりやすい解説
国際行政法 (こくさいぎょうせいほう)
international administrative law
この言葉は,学者によりさまざまに用いられていて,その概念についてはいまだに定説を生み出すに至っていない。第1に,19世紀後半にヨーロッパを中心に成立した国際行政連合(一般郵便連合,万国電信連合など)の組織と活動に関する法と解する立場がある。第2に,公権的権限を有する国際機構の組織と活動に関する法と解する立場がある。第3に,各国の国内行政法の適用範囲の限界を定める法と解する立場がある。第4に,国際社会を一つの共同体と観念し,そこに適用される法のうち行政にかかわる法を国際行政法とみる考え方がある。第5に,最近は,国際機構の事務局の構成や権限に関する法という考え方も出されている。さらに,第6に,国際機構による国際的公共事務処理に関する法を国際行政法とみる見方もある。
このように,国際行政法の概念に関して学者の見解は区々に分かれるが,いずれも,19世紀以降の各国の行政事務の拡大および諸国間の行政上の協力の進展という国際社会の一般的発展の状況を背景に使われるようになった概念であるということができる。とくに,そのうちの多くは,19世紀後半以降に出現した国際的団体に関連してこの言葉を用いているということができる。このことを考慮するならば,今日,比較的多くの学者によって使われている国際行政法の概念を広くとらえて,次のように定義することができよう。すなわち,国際行政法とは,固有の国際的公共事務を処理するためにつくられた国際機構の組織と作用に関する法である,と。
このように定義された国際行政法は,国際機構を設立する法文書である国際条約(国際法)を含むが,それに限定されず,国際機構が定立する固有の内部法,さらには,国際機構がその作用を及ぼしていく国内法関係をも含むことがある。また,従来,国際組織法といわれてきたものは,国際機構の内部の組織面に重点を置いていたが,国際行政法は,国際機構の対外的作用面をも含む,より広い概念である。
執筆者:横田 洋三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報