圧力がかかると水が100℃以上で沸騰するのを利用し、高温・高圧で短時間に食品を調理することができる鍋。プレッシャー・パンpressure panあるいはプレッシャー・クッカーpressure cookerともいう。鍋の上に重石(おもし)をのせて加熱すると、蒸気の逃げが減って圧力がかかり、100℃以上の温度で調理できることから考案されたもので、欧米で発達した。日本でも玄米炊飯用として、第二次世界大戦当時から普及した。固い肉類や豆類、根菜類、小魚の骨、海藻類などを柔らかく煮ることができ、しかも調理時間が短縮されて、熱に弱いビタミン類の減少がやや少ないという特徴がある。
鍋の材質は、厚くてじょうぶなステンレスやアルミニウムなどが多い。蓋(ふた)がゴム製のパッキングなどで密閉できる構造になっており、圧力がかかりすぎると破裂などの危険があるため、安全弁の装置がついている。圧力の調節は、細い蒸気孔の上にのせてある一定重量のおもりで行い、規定の圧力以上になると、自動的におもりが持ち上がって余分な蒸気が逃げるようになっている。「消費生活用製品安全法」により、現在家庭用は内圧が1.5キログラム/平方センチメートルまでに規制されている。調理温度は110~126℃程度の範囲で、種類によって圧力のかかり方が異なるため、どのくらいの温度で調理できる鍋かを確認しておかないと、調理のできあがりに過不足が生じてくる。使い方のポイントは、指定ライン以上に食品材料を入れすぎない、圧力がかかったら弱火にする、圧力が下がってから蓋を開ける、安全弁の点検などがある。また、加熱方式にはガス式と電気式がある。ガス式に比べて電気式は、温度調節ができるので余分な蒸気が逃げず、音が静かであるが、最初の温度立ち上がりが遅い。
圧力鍋は、消費生活用製品安全法の特定製品に指定され、国で定めた安全基準に合格したものにつけられるPSCマーク付き以外のものは販売できないことになっている。また、製品安全協会が安全性を認定し、万一人身事故が起きた場合に、対人賠償責任保険により補償が得られるSGマーク(Safety Goods)付きのものもある。
[河野友美・正木英子・山口米子]
『『圧力鍋フル活用――煮る、炊く、ゆでる、解凍…1鍋6役』(1988・グラフ社)』▽『今泉久美著『おいしい圧力鍋おかず――いつものおかずがアッ!という間にカンタンに!』(2005・池田書店)』
気圧が上がると水の沸点が上昇することを利用して内部を高温高圧にし,食品を加熱調理する器具。圧力釜ともいう。気密性,耐圧性に富む構造から成り,調節弁によって内部は約110~125℃,0.5~1.3kg/cm2に保たれる。国産品はアルミニウム,輸入品はステンレス,鉄ホウロウ製が多く,概して国産品のほうが高温高圧である。玄米,豆類,肉類等固いものを速く柔らかく煮ることができ,常圧での調理と比べ水分の蒸発は少なく,燃費は約半分。栄養損失は圧力・時間によって差があるが,全体として普通の煮方と際立った差はない。使用するときは,容量の2/3以上は内容物を入れない,沸騰したら弱火にする,内圧が低くなってから蓋をあけるなどの点を守る。圧力なべは明治末にはすでに使われており,もっぱら玄米を炊くためのものであったが,現在では広く多くの料理に応用されていて,調理のスピード化と省エネルギー性から普及している。
執筆者:佐々田 道子
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…高圧反応がまともいう。たとえば,水素添加のように高温高圧を要し,反応に与える物質の一つが流態の場合に用いられる回分式反応器で,高圧化学の分野で工業的にまた研究的に使用され,とくに実験用には不可欠なものである。立形と横形があるが,その機能構造上種々の差異がある。すなわち,加熱方法として直火式,油浴式(温湯,蒸気,ダウサム,溶融塩などの熱媒体),熱媒体を循環する蛇管(じやかん)式,または電熱線を用いるものなど,加圧方法は外部から圧力を加え,または材料の温度上昇に伴う内圧増加を利用するもの,型式としては静止型,内部かくはん型,回転型およびガスかくはん型などがある。…
…食物の煮炊きに用いる調理具の一種。〈肴(な)を煮る瓮(へ)〉,つまり副食物を煮るための土器の意味で,〈なへ〉と呼ばれたとされ,〈堝〉などの字をあてた。奈良時代にはすでに鉄製のものもあり,これは〈かななへ〉と呼んで〈鍋〉と書いた。《和名抄》には,金属製のものを〈鍋〉といい,瓦製(土製)のものを〈堝〉というとある。やがて鉄なべの普及にともなって,なべといえば金属製のものを指し,堝は土なべと呼ばれるようになるが,鎌倉初期成立の《続古事談》には〈銀ニテ土鍋ヲツクリテ〉という表現が見られる。…
※「圧力鍋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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