フランス生まれの実験器械製作者。蒸気機関の原理を最初に着想した人。アンジェ大学で医学を学び、1669年学位を取得。その後パリに出てホイヘンスの助手として空気ポンプの製作ほか、多くの実験器具を手がけた。1675年イギリス、ロンドンに渡り、ボイルの助手として空気ポンプによる実験を続けた。このころ安全弁付きの圧力釜(がま)を発明、1679年6月にはロイヤル・ソサイエティーで公開実験を行った。1680年ロイヤル・ソサイエティー会員となり、翌1681年ベネチアのアカデミーで実験を指導、1684年にはロイヤル・ソサイエティーの臨時実験主任を務めた。1687年にはドイツのヘッセンの領主に招かれてマールブルク大学教授に就任した。この地でパパンは、若いころホイヘンスから教えられた、シリンダー内で火薬を爆発させてピストンを持ち上げる装置の着想から、水蒸気を利用する装置を実験的に製作し始めた。この結果は「大きな動力を廉価に手にする新しい方法」(1690)という論文に十分解説されている。しかし実用化するには至らず、水蒸気を用いたセーベリー機関がイギリスで実用化に成功したことを聞き、また、ヘッセン領主からも実用化を促されたが、結局は成功しなかった。1707年イギリスに渡ったが、ふたたび注目されることはなかった。
[高山 進]
フランスの科学者,技術者。アンジェ大学で医学を学ぶ。卒業後パリに出て,C.ホイヘンスの助手として空気ポンプについての多くの実験を行った。1675年ロンドンへ渡り,R.ボイルと空気ポンプについての仕事をし,このとき安全弁付きの圧力釜を発明した。80年ローヤル・ソサエティ会員。81年ベネチアへ,84年再びロンドンへ渡り,87年にはドイツへ赴いてマールブルク大学数学教授となる。このころ揚水用のポンプの開発に熱中し,水蒸気の凝縮を利用した装置を考案したが,実用化することはできなかった。1707年イギリスに三たび渡ったが,以後注目される仕事はなかった。
→蒸気機関
執筆者:高山 進
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