もみからもみがらを取りはずした米で,一般にはゴムロールのもみすり機を用いてもみから玄米をつくり,麻袋や紙袋に詰めて貯蔵する。日本では米は大部分玄米の形で貯蔵されている。この玄米貯蔵は徳川の藩制時代に始まったといわれており,日本独特の方法である。玄米の構造は外側から果皮,種皮,糊粉層などのぬか層と呼ばれる部分と,米粒の基部に小部分を占める胚芽と,残りの大部分の胚乳からなっている。このぬか層と胚芽を除いたものが精米(白米)である。玄米の標準的な化学組成は水分15.5%,タンパク質7.4%,脂質3.0%,糖質71.8%,繊維1.0%,灰分1.3%,ビタミンB1は100g中0.54mgで,糖質(デンプン)が大部分を占め,タンパク質や脂質はそれほど多くない。ビタミンB1はかなりある。
玄米は精米に比較して,貯蔵性がよく微生物の害や虫害が少ない反面,食味が悪く消化吸収が劣る。しかし成分的にはタンパク質,脂質,ビタミンB1が多いのみならず,最近注目されてきたダイエタリーファイバー(食物繊維)やビタミンEも豊富にあるので,健康によいということで,玄米を炊飯して食べる玄米食が一部に行われている。ただし,消化吸収率からみると,玄米は約90%であり,精米は98%であるので,どちらも栄養として利用される量はほぼ同じであるという説もある。
→米
執筆者:竹生 新治郎
第2次大戦までの日本では白米食による脚気の害が大きかったため,たえず玄米食が提唱されていた。玄米パンもそうした運動の一環としてつくられたもので,玄米粉と小麦粉を材料とした濃褐色の蒸しパンである。大正期以後,自転車にのって〈玄米パンのほやほや〉と呼売する玄米パン屋の姿は,しばしば見られたものであった。玄米を炊く場合は圧力釜を利用するか,二度炊きにするとよい。玄米茶は,いった玄米を番茶にまぜたもので,こうばしい香りが喜ばれる。
執筆者:菅原 龍幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
籾(もみ)米から籾殻のみを除いた精白していない米をいう。玄米から胚芽(はいが)と糠(ぬか)層を除いて胚乳を集めたものである白米に対し、色・光沢から「黒米(くろごめ)」とよばれた。この黒に相当する字が玄である。日本では大型工場(サイロで籾米貯蔵後、白米に精白)以外は生産地で玄米として袋詰めし、米の貯蔵、輸送は玄米で行われるのが主流である。玄米は白米より虫害や微生物の害も受けにくく、貯蔵性がよい。しかし胚芽中の脂肪がリパーゼで分解されて酸敗することにより、風味が落ちる場合がある。玄米はタンパク質(100グラム中6.8グラム)、脂質(同2.7グラム)、無機質(同650ミリグラム)、ビタミンB1(同0.41ミリグラム)、食物繊維(同3.0グラム)の含量が白米より多く栄養的に良好である。しかし白米と同じような方法で炊飯すると、吸水、デンプンの糊化(こか)が十分行われず、消化、吸収は白米より悪い。それでも玄米食は無機質、ビタミンおよび食物繊維の供給源として関心を集めている。
玄米の炊飯は、常圧では、二度炊きしてもなかなかおいしいご飯になりにくく、圧力釜(がま)などの特殊な器具を必要とする。すなわち、十分吸水させたのち加水重量比1.6~2.0、110~120℃で炊飯すればおいしい玄米飯ができる。また玄米にパフ(膨化)加工を施して常圧で炊飯できるようにした加工玄米が市販されている。この場合炊飯には白米よりいくぶん多めの水加減が必要である。さらに玄米粥(がゆ)や発芽玄米も加工食品として市販されている。
[不破英次]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…おしべは6本で通常のイネ科植物の3本とは異なり,この点で類縁のサヤヌカグサやマコモと共通している。受精後の子房は発育して玄米(植物学的にいう果実に相当)となる。
【分類と品種】
[日本型とインド型]
日本型とインド型アジアイネは通常日本型とインド型に大別される。…
…収穫された米はもみ殻をかぶっており,これを〈もみ(籾)〉という。日本では,もみ殻をはずした玄米の形で包装,集荷,貯蔵するのが多いが,最近一部ではもみのばら集荷,貯蔵が行われている。外国では米はすべてもみの形で集荷,貯蔵される。…
…このほか搗米を営むものとして大道搗が,1727年(享保12)当時1100人ほどいた。搗米屋,大道搗はともに玄米を河岸八町米仲買(25人),脇店八ヵ所組米屋(275人)から買い入れ,白米にして消費者に売っていた。消費者への米の販売は,河岸八町米仲買と脇店八ヵ所組米屋が玄米を,搗米屋が白米を売ること以外にはできなかった。…
※「玄米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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