社会運動が政府によって弾圧された場合とられる,非合法な運動の形態。主として反体制運動が合法的な活動を行う可能性が狭隘(きようあい)化したときや,なくなったときに生ずるが,必ずしも政治運動だけにみられるわけでなく,古代ローマのキリスト教会やナチス・ドイツでの一部の教会のように宗教的・イデオロギー的理由で地下運動の形態をとる場合も存在する。一般に,地下運動は政治警察の抑圧と監視の下で行われるところから,それに対抗しうるだけの組織と,情報の伝達系統,さらに人民の暗黙,半公然の支持が不可欠である。組織の成員は厳選され,しかも相互の関係も統制され,成員には必要最小限の任務と情報とが伝えられる必要がある。合法的組織や大衆との接触も有機的に行われなければならない。さらに非合法出版や地下放送を通じて状況が伝えられ,運動者の士気を高める必要もある。民衆の支持や組織の規律が強固で,事実上の二重権力が生じる程度にまで運動が発展し,地下政府ができることがある。ドイツ占領中のフランスのレジスタンスや植民地時代のアルジェリアのような民族解放運動が,この好例である。しかし反面では運動がうまくいかない場合には,当局のスパイ等によって組織が攪乱(かくらん)されたり,また内部対立や分裂が生じる危険性も存在している。
→秘密結社
執筆者:下斗米 伸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般に非公然的あるいは非合法的に行われる反政府もしくは反体制運動をさす。歴史的には、非合法時代の各国共産党などの革命運動がこれにあたる。また、ナチ体制下におけるレジスタンスもこうした反政府、反体制の思想的、政治的、軍事的活動であった。ただし、かならずしも反政府、反体制でない活動でも、それが政府や体制の側からみて好ましくないと考えられるために、弾圧を恐れて地下に潜る場合がある。たとえば、ソ連やかつての東欧などの社会主義国のなかで政府の意向やイデオロギーに反する文芸運動や宗教活動が、地下運動として存続した。そうした運動の主張や報告は、地下出版物(ソ連の場合はサミズダートとよばれた)として国内のみならず国外にも持ち出されて出版された。
地下運動の新しい形態としては、文字どおりアンダーグラウンドあるいはアングラの名のもとに、1960年代中葉からアメリカその他の高度に工業化、都市化、管理化した消費社会のなかに現れたヒッピーなどの運動があげられるであろう。この場合は、社会の主流をなす側(いわゆるエスタブリッシュメント)の生活様式や文化に対する抗議ないし批判としての「対抗文化」の形成、あるいは自分たちの自己確認と新たな共生の実現を図る「もう一つの社会(オールターナティブ・ソサエティー)」を志向するものであって、反技術的、反物質的な共同生活(コミューン)を実践する若者たちの運動をさす。こうしたアングラ運動では、きわめて活発な宣伝・情報活動によって同調者を得ようとする組織的努力がなされ、社会の脱落者(いわゆるドロップアウト)や麻薬患者などの救済にも努めている。
[飯坂良明]
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