地方税規則(読み)ちほうぜいきそく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地方税規則」の意味・わかりやすい解説

地方税規則
ちほうぜいきそく

明治 11年太政官布告 19号で,明治政府の地方税に関する基本的規定。わずか7ヵ条から成るが,同日 (1878.7.22.) 制定された府県会規則郡区町村編制法とともに三部法と呼ばれ,明治初年地方制度史上における重要立法である。それまで府県税および民費 (明治初年,国庫より支給されるものおよび府県税収入で支弁されるもの以外の府県区町村の費用および収入の総称) の名で徴収してきた府県費および区費を地方税と定めた。地方税の財源は地租5分の1以内,営業税ならびに雑種税および戸数割りに従って徴収された。また,この規則は地方税で支弁すべき費目 (警察費など) も定めているほか,地方税の収支予算は府県会決議を要するものとしており,ここに府県自治制の発端がみられる。改正されつつ,1890年制定の府県制施行まで行われた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方税規則」の意味・わかりやすい解説

地方税規則
ちほうぜいきそく

1878年(明治11)7月布告の三新法(さんしんぽう)の一つ。従来の府県税・民費などを地方税として統一し、地租5分の1以内の地租割、営業税、雑種税、戸数割に制限した。府県は府県会議決を経、この地方税で警察費その他、国政委任事務費を支弁した。この規則は、国家地方行政機関である府県の財政確立をねらったものである。80年4月の全文改正などを経て、90年府県制の施行により廃止された。

[山中永之佑]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「地方税規則」の解説

地方税規則
ちほうぜいきそく

明治前期に三新法の一つとして制定された地方財政法。1878年(明治11)7月公布。府県税および民費が地方税とされた。地方税の種別としては,地租5分の1以内の国税地租付加税,営業税・雑種税・戸数割が法定され,警察費・府県立学校費・府県会諸費など12項目が支弁費目に計上された。会計年度は7月から翌年6月までとし,府知事および県令が編成して提出する予算について府県会が議決した。このような組織的な地方財政制度の形成は地方財政の秩序回復に役立ったが,府県財政の偏重と委任事務の増加といった日本の地方自治制度の基本的矛盾も生みだした。1926年(昭和元)廃止。

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旺文社日本史事典 三訂版 「地方税規則」の解説

地方税規則
ちほうぜいきそく

1878(明治11)年公布された,維新後初めての体系的な地方財政に関する法。郡区町村編制法・府県会規則とともに三新法の一つ
従来の府県税・民費などの諸税の大部分を,地方税という名目で府県財政に編入することによって府県の財政を確立し,今まで民費に含まれていた区町村の共同体的な費用は協議費として地方税の枠外に置くことによって区町村から財源を奪った。1888年市制・町村制公布に伴って廃止された。

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改訂新版 世界大百科事典 「地方税規則」の意味・わかりやすい解説

地方税規則 (ちほうぜいきそく)

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世界大百科事典(旧版)内の地方税規則の言及

【営業税】より

…廃藩置県後の府県税目に加えられ,たとえば生糸売買,売薬,酒類・しょうゆ醸造などの鑑札交付に見られるように,営業免許料は府県の営業の実情に応じて実に多種目に及んでいた。1878年の地方税規則制定によって,地租割,戸数割とともに営業税・雑種税が地方税(府県税)として課せられる統一的な制度が成立した。営業税は,当初会社税・卸売商税(一類),仲買商税(二類),小売商税・雑商税(三類)の3種類に分類され,類ごとの税率で課税された。…

【戸数割】より

…戸数割の原型とみられるものとしては江戸時代から門割(かどわり),小間割,間口割と呼ばれる家屋税に近いものもあり,人頭税に類するもの(沖縄ほか)もあった。明治に入り,1878年7月の地方税規則により,それまでの府県税(1875年雑税・賦金を整理)および民費を,地租割,営業税・雑種税,戸数割の3種と定めたことによって,三新法体制下の地方税として登場した。戸数割は,納税義務者を毎戸現住者と定めたのみで,課税客体,課税標準,制限税率もあいまいな封建的・人頭税的な課税方法を残す地方税として出発した。…

【三新法】より

…1878年公布された明治政府最初の統一的地方制度で,郡区町村編制法,府県会規則,地方税規則の三つからなる。徴兵・教育・地租改正などに反対する農民騒擾(そうじよう),国会開設を求める自由民権運動のめばえという物情騒然たる状況に対処するねらいで,大区・小区制の官僚支配への転換をもたらすために発布された。…

【地方財政】より

…その成立過程をみると,まず1871年の廃藩置県の後,府県体制が中央集権的に整備されるなかで,各府県官により行政機構の末端機関として大区・小区が設けられ,幕藩体制下の自治組織であった町村が制度上否認されるが,実際には,地租改正等の新政策を実施するための末端事務と当時の地方費の中心であった民費の課出は,旧来の町村組織に依存せざるをえないという矛盾に陥った。農民騒擾(そうじよう)が続発し自由民権論が台頭するなかで,78年,地方自治制の端緒となる地方三新法(郡区町村編制法,府県会規則,地方税規則)が制定され,大区・小区制が廃止されて郡町村制が復活し,府知事・県令と郡長の行政権の圧倒的優位のもとにではあるが,一応の町村自治と公選制地方議会の設置が公認された。また府県税の税源と支出費目がはじめて統一的に規定され,それと町村費が明確に分離されて地方財政制度が近代化された。…

※「地方税規則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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