府県制(読み)フケンセイ

デジタル大辞泉 「府県制」の意味・読み・例文・類語

ふけん‐せい【府県制】

明治23年(1890)に制定された、府県権限・地位に関する法律。官治的性格が強かった。昭和22年(1947)の地方自治法公布により廃止

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精選版 日本国語大辞典 「府県制」の意味・読み・例文・類語

ふけん‐せい【府県制】

  1. 〘 名詞 〙 明治二三年(一八九〇)、地方公共団体である府県の基礎を定めた法律。同三二年全文改正。昭和二二年(一九四七)地方自治法の施行により廃止。
    1. [初出の実例]「東京府庁にては郡制、府県制の発布を待て実施する筈にて」(出典:朝野新聞‐明治二一年(1888)七月五日)

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改訂新版 世界大百科事典 「府県制」の意味・わかりやすい解説

府県制 (ふけんせい)

府県は市町村を包括する広域的普通地方公共団体であり,直接公選の知事と議会の二元的代表機関のもとに,普通地方公共団体の権能のうち,広域的なもの,統一的処理の必要なもの,市町村にゆだねるのが不適当な規模のものを処理するとともに,市町村間の調整を責務とするとされている。府県とは歴史的沿革による名称の違いであって,実質的権能を異にするものでない。また,道とも権能を異にしないが都とは,都が市的権能を併せもっている点で相違する。

明治維新後の廃藩置県によって東京,大阪,京都は府とされ他藩は県となったが,その後の試行錯誤を経て1890年に制定された〈府県制〉(地方団体法)に基づき,府県は近代的地方制度の中に位置づけられた。さらに99年の府県制改正によって法人格を与えられている。府県には1878年の府県会規則とその後の府県制に基づき公選の議会(府県会)が設置された。府県制は府県が知事によって統轄され,代表されることを規定した。だが,府県知事は〈地方官官制〉(勅令)に基づき,国の普通地方官庁であり,天皇に任命される官吏であった。府県の団体としての権能は非権力的な事業や公の施設の設置などに限定されており,府県の仕事の大部分は普通地方官庁たる知事に執行委任された国政事務であった。しかし,国政委任事務の執行にかかる経費は,府県も分担しなければならなかった。府県会は歳出入予算の議定権限等をもったが,現実には国政委任事務への費用負担の同意を主たる役割としたにすぎない。加えて知事は市町村への指揮監督権をもった。府県は法人格をもつ団体とは名ばかりの国の行政区画であった。

このような府県は,第2次大戦後,日本国憲法制定に伴い民主的改革によって大きく性格を変えた。戦後地方制度改革のうち官選知事の廃止と知事公選制の導入が最大の改革とされるが,市民の代表を府県行政機構の長とすることにより,府県は完全自治体となり,市町村との責任分担も冒頭のように定められた。しかし,戦後初期から高度成長期にかけて府県の地位は安定しなかった。地方庁や道州制構想にみる府県廃止論や府県合併が論じられた。これは一つには知事公選制への不信感によるが,他方,明治中期から区域の変更がなく経済投資の非効率が問題とされたことによる。府県制の枠組みはこうした改革構想に揺れ動きながらも基本的に変わらないまま推移してきた。だが,府県の完全自治体化にもかかわらず,市町村の側から府県制をみるならば,依然として国の出先機関的色彩が濃い。知事は市町村長への機関委任事務に指揮監督権をもつと同時に,みずからへの機関委任事務を再委任できる。加えて,知事は機関委任事務の執行を通じて市町村行政に許認可権を行使している。市町村の国への補助金や起債申請は府県庁を経由することになっており,府県で実質的審査が行われる。近年,府県の中には自治,分権化を求めて,制度本来の趣旨である広域的補完行政機能広域行政)に脱皮しようとする動きがみられる。
知事 →地方公共団体
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百科事典マイペディア 「府県制」の意味・わかりやすい解説

府県制【ふけんせい】

1890年制定された地方行政制度。1868年(明治1年)の府藩県3治制は,藩廃止により3府302県,1888年までに3府43県に統合。府県知事は官選の官吏で,当初府県議の被選挙権者は直接国税10円以上納付者に限られた制限選挙であった。数次の改正で選挙・被選挙権の制限枠が緩められ,議会権限拡大も図られたが,戦時体制下に逆行。第2次世界大戦後の1947年,地方自治法の施行により,旧来の府県は廃止され,知事公選制による完全自治体となった。しかし国,市町村との間にあって,国の補助金,機関委任事務,許認可権など,国の出先機関的色彩も残るなど問題点も多い。
→関連項目三新法

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「府県制」の解説

府県制
ふけんせい

1890年(明治23)5月に郡制とともに成立した地方自治制度を定めた法律。府県会規則を基礎に,内閣・元老院・枢密院の議をへて難航の末に公布された。府県の法人性,府県会議員の間接選挙,被選挙権の拡大,執行機関としての参事会の設置,起債権の獲得などの規定に特色がある。全体として官治性が強く,自治性に乏しい。知事は官選であったが,府県会は大正末には普通選挙制となり,昭和初期には条例制定権を獲得した。第2次大戦後の1947年(昭和22)地方自治法の公布により廃止。

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旺文社日本史事典 三訂版 「府県制」の解説

府県制
ふけんせい

1890年に制定された地方行政制度
府県は府藩県三治制により誕生し,1871年の廃藩置県により3府302県となり,3府72県を経て3府43県となった。国の行政区画としての性格が強く,'90年府県制により自治体としての機能や組織をいちおうはもったが,政府任命の知事の権限が強く,自治権は制限されていた。第二次世界大戦後,1947年地方自治法公布により廃止。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「府県制」の意味・わかりやすい解説

府県制
ふけんせい

地方制度」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の府県制の言及

【地方公共団体】より

…明治維新から約20年間にわたって地方団体の編成には幾多の曲折がみられるが,ほぼ明治20年代に入って制度の安定をみた。これ以降,地方団体の権能と組織は,1888年制定の市制,町村制および90年制定の府県制,郡制なる4件の地方団体法に定められた。府県は郡市町村を包括する団体であり,郡は町村を包括する団体である。…

※「府県制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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