日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方財政健全化法」の意味・わかりやすい解説
地方財政健全化法
ちほうざいせいけんぜんかほう
地方公共団体の財政再建を促し破綻(はたん)を未然に防ぐための法律。2007年(平成19)に制定され、2009年に全面施行。正式名称は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律94号)。破綻した地方公共団体を即座に国の監視下に置いて自由に予算編成などをできなくする旧法(地方財政再建促進特別措置法)と異なり、破綻のおそれがある場合、事前に計画的な財政再建を求める早期是正措置を促す仕組みを導入した。地方公共団体本体(一般会計)だけでなく、病院、地下鉄、上下水道、公営住宅、第三セクターなどを含む連結ベースで借金の多さを診断する手法も取り入れた。2000年代に入り、当時総務大臣だった竹中平蔵が地方公共団体の破綻法制の必要性を提言。2006年に北海道夕張(ゆうばり)市が破綻(財政再建団体入り)した経緯を踏まえ、政府は半世紀ぶりに地方公共団体の財政再建に関する法制を改めた。
健全性を診断する目安として、税収や地方交付税などの総額(標準財政規模)に対する一般会計の赤字額の割合を示す実質赤字比率(早期健全化基準11.25~15%、財政再生基準20%)、公営企業や地方公社などを含む赤字額が標準財政規模に占める割合を示す連結実質赤字比率(早期健全化基準16.25~20%、財政再生基準30%)、一般会計に占める借金返済割合を示す実質公債費比率(早期健全化基準25%、財政再生基準35%)、地方公社や第三セクターを含めた将来の借金負担の重さを数値化した将来負担比率(早期健全化基準:市町村350%、政令指定都市400%、財政再生基準なし)の4指標を導入した。いずれか一つでも4指標ごとに定めた健全化基準より悪化した場合、財政健全化団体となり、財政健全化計画の策定を義務づけられ、自主的に財政再建に取り組む。将来負担比率を除く三つの指標のうち一つでも、再生基準より悪化した場合には、破綻に相当する財政再生団体となる。国の厳しい監視の下で、市町村民税の引上げ、水道・保育料など公共料金の引上げ、学校・病院など公共施設の統廃合、公務員・給与の削減などを迫られる。総務大臣の同意がなければ原則、地方債を発行できず、計画通りに再建が進んでいない場合、総務大臣は予算変更などを勧告する。同法全面施行時に、全国に財政健全化団体が21市町村、財政再生団体は夕張市のみであった。その後、夕張市は財政再生団体のままであるが、他の市町村では財政再建が進み、2014年度決算以降、財政健全化団体はゼロである。
[矢野 武 2022年8月18日]