地方財政再建促進特別措置法(読み)ちほうざいせいさいけんそくしんとくべつそちほう

改訂新版 世界大百科事典 の解説

地方財政再建促進特別措置法 (ちほうざいせいさいけんそくしんとくべつそちほう)

1954年に空前赤字決算となった地方財政を建て直し,その健全性を確保するため,臨時に地方公共団体の行政および財政に関して必要な特別措置を定めた法律(1955公布)。この法律は,昭和29年度末で赤字のある地方公共団体がおおむね7年以内に歳入・歳出のバランスが回復するような経費節減と地方税の徴収強化,増税等の増収に関する財政再建計画を樹立し,自治庁長官がこれを承認することを前提に,このような財政再建団体に赤字をたな上げするための財政再建債の発行を許可する一方,国が予算の範囲内で再建債の利子の一部を補給する,という内容になっている(2~15条)。日本国憲法の下で地方自治が制度的に保障され,地方公共団体は住民に身近な多種・多様かつ多量の行政を担当することになったのであるが,その経験不足もさることながら,義務的な地方自治行政に適切な財源が保障されていなかったことが直接の原因となった法律であるといってよい。この法律の適用を受けた財政再建や,適用を受けなかった自主的財政再建も含めて,地方財政の収支の均衡化は,地方公共団体の事務の縮小,行政水準の切下げ,人員整理等によって行われた。

 ちなみに,本法は,昭和30年度以降に赤字を生じた地方公共団体にも,その申出によって準用されることになっている(準用再建。22条2項)。しかし,昭和36年度以降は,このような赤字団体は,準用再建を申し出ないと,主として公の施設(営造物)の建設費に充当する地方債の起債の制限を受けるので(23条1項,同法施行令11条の2参照),地方財政の制度的構造からみて,自主再建の選択の幅は狭い。なお,1966年には地方公営企業の財政再建に関して同様の措置がとられ(地方公営企業法第7章),73年には,〈地方公営交通事業の経営の健全化の促進に関する法律〉が制定された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

地方財政再建促進特別措置法
ちほうざいせいさいけんそくしんとくべつそちほう

昭和30年法律195号。地方財政の健全化の措置として 1955年に実施された法律。1950年代初期は地方財政逼迫が激しく,1954年度には全国の地方公共団体の約 40%,2281団体が赤字団体であった。このため同法により,財政が破綻し財政再建団体に指定された地方公共団体の財政運営に国が介入し,職員数の削減,給与水準の適正化,新規事業の繰り延べなどの支出節減と,地方税,使用料,手数料の増徴など収入の増加をはかる厳しい財政再建措置を求めた。これとともに国からの財政援助として,特別交付税による一時借入金の利子補給,起債制限の緩和,財政再建債の発行(公営企業にかぎる)などの措置がとられた。2009年に廃止され,地方公共団体の財政の健全化に関する法律に継承された。

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世界大百科事典(旧版)内の地方財政再建促進特別措置法の言及

【財政再建団体】より

…地方公共団体の財政が多額の赤字を生じ,自力再建が困難となった場合,地方財政再建促進特別措置法(略称,再建法)により,一定条件のもとで国からの援助を得ることができる。第2次大戦後の復興期には,財政需要の急増と財源不足という基本的背景に朝鮮戦争後の不況の影響が加わり,1954年度には全地方公共団体の38.5%が赤字団体に転落した。…

【地方債】より

…(1)交通・ガス事業など地方公共団体の公営企業の財源に充てる場合,(2)出資金および貸付金の財源に充てる場合,(3)地方債の借換えの財源に充てる場合,(4)災害関係事業の財源に充てる場合,(5)普通税の税率がいずれも標準税率以上である地方公共団体において,公共・公用施設の建設および用地取得の財源に充てる場合。ただし,地方財政再建促進特別措置法23条の規定により,前年度の赤字額が標準的一般財源額の5%以上である都道府県および20%以上である市町村は,財政再建団体の指定を受けないかぎり,(5)の目的での起債を禁じられている。なお,このほかにも特例法によって発行を認められている地方債があり,地方財政再建促進特別措置法に基づく退職手当債や災害対策基本法に基づく歳入欠陥等債などがその例である。…

※「地方財政再建促進特別措置法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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