地球環境ファシリティ(読み)ちきゅうかんきょうファシリティ

百科事典マイペディア 「地球環境ファシリティ」の意味・わかりやすい解説

地球環境ファシリティ【ちきゅうかんきょうファシリティ】

世界銀行,国連環境計画UNEP),国連開発計画(UNDP)の3者が開発途上国に地球環境保全対策の資金を供給する目的で1991年5月につくったシステム。Global Environment Facilityといい,略称GEF融資の対象となるのは,1.地球温暖化防止のための二酸化炭素(CO2)などの抑制,2.国際水域の汚染防止,3.オゾン層の保護対策。1992年6月の国連環境開発会議地球サミット)では,先進国側の地球環境ファシリティの設立提案に対し,開発途上国側が世界銀行を中心とする先進国主導の運営を不満として新組織の創設要求議論が紛糾した。しかし途上国側は結局,対象事業の拡大への柔軟な対応,透明で民主的な管理などを条件に,地球環境ファシリティの設立と,これによる資金援助を認めた。1991年−2002年に,供給された基金40億ドルのほか,120億ドルの資金を調達し,約140ヵ国のプロジェクトを支援。その後二回の増資を経たが,21世紀の生物多様性確保や地球温暖化と気候変動に関する支援など課題は増大しており,2006年以降資金規模31億ドルのフェーズ4に入っている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地球環境ファシリティ」の意味・わかりやすい解説

地球環境ファシリティ
ちきゅうかんきょうファシリティ
Global Environment Facility; GEF

発展途上国で行なう地球規模の環境問題に取り組むプロジェクトに対して,原則無償で資金を提供する国際的資金メカニズム。略称は GEF。世界銀行に設置された信託基金で,その資金を活用して世界銀行,国連開発計画 UNDP,国連環境計画 UNEPなどの国際機関がプロジェクトを実施する。具体的なプロジェクトには,気候変動枠組条約生物多様性条約砂漠化対処条約残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約POPs条約),水銀に関する水俣条約がある。対象分野は,気候変動,生物多様性オゾン層保護といった地球規模の環境保全を目的とするものにかぎられる。1991年に第1回の参加国会合が開かれ,GEFパイロットフェーズが発足,3年の期限終了後に改組し,1994年に正式に GEFが始まった。増資は 4年ごとに行なわれる。発足以来 2018年までに 170ヵ国で 4500件以上のプロジェクトを実施し,181億ドル以上を提供した。2019年8月現在,参加国は 183。

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世界大百科事典(旧版)内の地球環境ファシリティの言及

【国連環境開発会議】より

…実施手段のうちの資金の問題は地球サミットの最大の焦点の一つであるが,おもに開発途上国へどのようなメカニズムを通じて,どれだけの額の資金が支援されるべきかをめぐって議論された。メカニズムの問題では地球環境ファシリティ(GEF)の改革と世界銀行やODAなど既存のメカニズムの活用と決定がなされたが,このうちGEFとは,1991年に発足した,開発途上国の地球環境保全の支援のために,対象領域を決めて,贈与,または超低利融資で資金を供与する多国間援助のしくみであり,UNEP,世界銀行,国連開発計画(UNDP)の3者により共同運営され,1994年からは20億ドル強の資金で本格実施が開始されている。支援の額については政府間の合意ではないが,地球サミット事務局の年間1250億ドルの供与が必要との試算が示され,各先進国のODAを対GNP比0.7%まで拡大する目標が再確認された。…

※「地球環境ファシリティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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