改訂新版 世界大百科事典 「坑内排水」の意味・わかりやすい解説
坑内排水 (こうないはいすい)
mine drainage
鉱山,炭鉱の坑内における湧水の防止および湧水の処置をいう。坑道を掘削して含水層に掘り当てたり含水層の下にある耐水層中に坑道を掘った場合,もしその天井が崩落するとその水が坑内にわき出てくる。また断層や昔の採掘跡は一般に含水層と同じく水を通し,多量の水がわき出てくるおそれが多い。このような坑内湧水に対しては,次のような対策を講じなければならない。(1)坑内への水の流入をできるだけ防ぐ(河川の改修や河底の被覆などによる)。(2)坑内に湧出する水を止める(たとえばセメント注入によって湧水を止めたり,ダムを築いて水の浸入を防ぐ)。(3)坑内に湧出した水を坑外へ排出する(狭義の坑内排水はこれを指す)。
湧出水の坑外への排出
採掘が通洞(直接地表に連絡する坑口を有する横坑)の水準以上で行われる場合は,湧水が自然に通洞に流れて集まるようにし坑口から自然排出させるが,採掘が坑口水準以下で行われる場合はポンプ排水によるしか方法がない。ポンプで水を吸い上げることのできる高さの限度は理論上10mであり,実際はそれ以下にとどまる。したがって,どんな場合にもポンプは坑内の水だめに近く設置しなければならない。これを運転する機関は,ポンプの種類によっては坑外に設置することもできるが,坑内が深くなり水量も多い現在では,ポンプと運転機関を一体として据え付ける坑内ポンプが普通である。昔は蒸気ポンプ,水力ポンプも利用されたが,今日では電気ポンプが広く用いられ,なかでも坑内の主要ポンプには電動機運転の高速度回転に適し比較的小さくてすむタービンポンプがおもに使われている。切羽用の小型ポンプには,電気ポンプ,圧縮空気運転のポンプ,ジェットポンプなどが用いられ,泥水に対して敏感でないものが好まれる。おのおのの切羽における湧水を切羽用小型ポンプで各区域に設けられたポンプ座(水だめとポンプを設置した室)に集め,それらを主要立坑底あるいは主要斜坑底に設けられた主要ポンプ座に集めて坑外に排出する。
執筆者:伊木 正二+大橋 脩作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報